穏やかに手を取り

まだ水鏡先生門下だった頃。
。。。。。。

「またやってしまいました……」
薄暗くなってきた部屋で、しゅん、と項垂れた。
「今度はどうしたんだい?」
目の前に座っているホウ統の顔は見えなかったけれど、恐らく呆れたような顔をしているのだろう。
「歩いていたら具程に足を掛けられたのでとっさに突き飛ばしたら、具程が川に…」
「落ちた?」
「そうです」
はあ、とため息を付いた。
そのせいで怒った具程がおもいっきり私を叩くし、周りの人間に言いふらしたせいでもっと嫌われたし。
……友達は元から二人しかいないけど。
かちゃり、と後ろで茶器の音がした。
「えーと、お茶を持ってきたんだ。飲まないかい?」
「そりゃあいい。いただこうかねぇ」
「……いただきます」
お茶を配っている徐庶の頭をもふもふと叩く。
もう半分やけくそだ。ああ人生をやり直したい。
「孔明…?」
「何で私はこんな人間なんでしょう吹っ飛びたいです。徐庶、協力して下さい」
「そ、それは無理な相談だ…。それに俺より士元の方が…」
「あっしもお断りだねぇ。あんたら二人はもう少し自信を持ちなよ」
「すみません、持つ自信が見当たりません…」
「俺なんかが自信なんて…、おこがましいよ」
今度はホウ統が大きくため息を付いた。大げさに肩を落として見せる。
「……ああもう、とりあえずこの話はおいておくとするかね」
「具程、だったかな…?」
「もう具程の事はどうでもいいんです。気にしないでください」
「そういうわけにも行かないだろう。…どうせまた何か仕掛けてくる」
「まぁ、それはそうだろうねぇ」
「私達、明らかに周囲から浮いてますもんね…」
ははは、と空笑いをこぼして、ほとんど同じ動作でお茶を飲む。
にわかに重い雰囲気が立ち込めた時、徐庶がそうだ、と声を上げた。
「一人でいるから難癖を付けられるんだろう?」
なら一緒にいればいい。
言外に含まれた言葉に、軽くめまいがした。
「やめてくださいよお守りをされる子供ですか」
「いいんじゃないかねぇ、そっちのほうが色々と楽だろう?」
「士元裏切りましたね許しません」
正直そっちのほうがありがたいのだけど、そこまでさせるのはさすがに忍びないというか、私が土下座したくなるというか。
「なんのことかあっしにはさっぱりだよ」
「…やはり俺なんかがついていては迷惑だな、すまn「お願いします」
思わず口に出してしまった。青ざめる私を余所、ホウ統は意地の悪い笑みを浮かべる。
「なら、決まりだねぇ」
「いいんですか本当に?嫌われますよ」
「構いやしないさ!」
「ああ。気にしないでいて欲しい」
この変わり者め、と口に出しそうになって慌てて噤んだ。
そんなことを言ったら、多分この人達は喜んで肯定するだろうから。
「……ありがとうございます」
小さくつぶやいた言葉は、果たして聞こえていただろうか。





。。。。。。。。
諸葛亮成代さんがあんなに暗いのは友だちがいないからです()
因みに具程は適当につけました。そんな人いません。(多分)
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