不可視の太陽

(なぜか)そうそうといっしょ。
定期的なシリアス書きたい病。


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昔、曹操と鳥を射に行ったことがありました。
一、二匹獲れれば良いというような、ほんの軽いものだったんです、けど。
「曹操殿?!」
崖の岸に立って上ばかりを眺めていた曹操の足元が不意に崩れ落ちたのです。私は必死に手を伸ばし、彼の手を掴みました。
その時曹操は、不可解なものを見る顔をしていたのを覚えています。







パチリ、と蝋燭の火が爆ぜた。
目の前で酒を傾けた曹操が、さも愉快というように笑っている。
「劉備、」
「何ですか?」
「何故儂を助けた」
は?と思わずな言葉をごまかすように、劉備は咳払いした。
「何故、って。……普通助けるでしょう?」
「普通は助けぬ」
「……目の前で知り合いがいざ死ぬかもしれないのに、貴方はなにもしないんですか?」
「普通の知り合いならばな」
ふ、と吐息を漏らした曹操に、劉備は漸く合点の行く。
そして思う。
奸雄も大変だ、と。
「…あの時不意打ち的に貴方を殺しても状況は悪化するだけですしおすし」
「それだけではないだろう?天下の動きがどうだとしても、あの時お前は儂を助けた筈だ」
劉備は目を細めた。
「そりゃあ、まあ。…そうでしょうねぇ」
「何故だ?儂なら殺すぞ。垂涎物だ」
おそろしいことを言っているのに、その顔はまるで悪戯童子のようで。
ああ、この人は私を怖がらせたいんだな、と、劉備は心内でふかく呆れた。
そして、苦笑というには苦味のいささか足りない顔をする。
「あなたなら殺すでしょう。あなたはとても優しいから」
「貴様には儂が優しくみえるか?」
「みえますよ」
「儂は孔融を殺したぞ」
「恐怖政治というやつですね。人望は急転直下ですけど、いいんじゃないですか?」
曹操は笑った。小さな声だったそれはやがてだんだんと大きくなり、やがて部屋中に響く高笑いとまでなった。
「…急にどうしました曹操さん」
「劉備、仁はどうした。私を悪だと言わぬのか?」
「何故か徳の人なんて言われていますけど、私はそれを守れるほど強くないですよ」
「ほう?」
曹操が視線で続きを促す。
「それに悪の定義ってなんなんですか?誰かを不幸にしたら悪?誰かを踏み台に何かを得たことのない人間なんて、多分きっと居ませんよ」
曹操は再び笑った。楽しくて面白くてたまらないという顔だった。
「……劉備、貴様は殺すに惜しいな」
「それでも殺すんでしょう?」
「ふ、それはそうだ」
秘密を囁くように息を潜めて、示し合わせたように杯を合わせる。
やっぱり此処の酒は美味しくない、と劉備は不満気な顔をして、ぼやけた月影を酒に映した。
それでも月を飲み込んで、いくらか口元を緩める。

明日は雨だ。







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連載書けないのに連載っぽくしたせいでやっぱり書けなくなったので書きたいところを書きました。
こういうのが一番楽しい。

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