はじめまして、ごきげんいかが?

まだかなー、まだかなー、ろっしゅっくさーん!
また無駄に草鞋と書簡を量産しながら、逸る気持ちを弄ぶ。
いやー昔から待つのが苦手というか、そわそわしちゃって集中出来ないんですよねー。落ち着けって言われたら落ち着いたふりぐらいは出来ますけどね!それなりの演技力は有ります。
「伝令です!」
27個目の書簡に紐を通した所で、入口の外に声が響いた。
「お、はーい!……なんでしょう?」
「呉からの使者です!」
「お名前は?」
「魯粛、と」
廊下に出て、拱手する伝令に微笑んだ。
「了解しました!お疲れ様ですー!」
「…はい!」
とうとう来たな、と歩きながら軽く服を叩く。
竹の削りカスが若干ついてるっていうこの体たらく!
だめだこりゃ。第一印象は大事なのにねー!
なるべく急いで応接室のようなところに向かい、最終手段として諸葛亮の羽扇で仰いでごまかす。
「劉備殿、また書簡を、書簡を作っておりましたな?」
「てへっ☆」
「……はぁ。この件は諸葛亮殿に任せておりますからな。私は、私は引くとしましょうぞ」
軍師は忙しいようだ。時間が惜しいとばかりにとびだしていった陳宮に手を降って、諸葛亮に向き直る。
「…“どっち”がいいと思います?」
口調大事!…多分。
ほんの一瞬考えた諸葛亮が、直ぐに口を開いた。
「……どちらでもいいでしょう。あくまで立場は劉備殿の方が上です」
「呉って心広いですよねー…!」
軽口を叩きながら椅子に座る。
しばらく待っていると、戸の外から足音がした。
すばやく拱手してた魯粛が、声を上げる。
「これはすみません劉備殿。少々遅れてしまいました」
「いや、全然気にしてません。…というか、遅れてらしたことに気づきませんでした…!」
ぽかん、と不意を突かれたような顔をわずかに覗かせた魯粛が、気を取り直すように笑った。
「さすが!心の広いことで」
椅子に座った魯粛が、ふと雰囲気を切り替える。
「…近年の曹操の動向は知って居られますな?」
此方を図るような顔に、駆け引き苦手なんだよなぁ、と内心苦い顔をした。
まぁ正直に答えたっていいだろう。魯粛さんなんか人当たり良さ…いやそれも策…もういいや考えるの面倒だ。
「それはもちろん、ですよ?……つい先日鬼ごっこしたばかりですし」
「はっはっは!あの戦いを鬼ごっこと言われますか!さすがは肝が座っておられる」
「いやうちの軍、我ながら被害は最小限に留まったと自負してますし、肝が座ってるのは趙雲だと思います。全身肝で出来てるんじゃないですかね……いやさすがに怖いか」
うん、と思い直す。揶揄だと分かっては居るけど本当なら怖いどころの騒ぎじゃない。
「……殿、話がずれていますよ」
「はーい。……それで、えーと、曹操に対抗するための同盟の話でしたっけ?」
「ふ、ははは、まさか劉備殿から先に本題に切り込まれるとは」
「…あ、まだ曹操軍が〜でじわじわと本題に近づいてるところだったんでしたねー…。じくじった?」
「……劉備殿、しくじったは口にだすものではありません」
諸葛亮の鋭いツッコミが気まずい。しばらく沈黙して、とうとう匙を投げた。
「…あーもー!こういうの苦手です諸葛亮!」
がくりと投げやりに肩を落とすと、目前の魯粛さんが意地悪く笑う。
「劉備殿と諸葛亮殿は親と子のようですな」
「……む、そうですかね?まぁ諸葛亮老け顔ですから、頑張れば父と子に見えなくも…?」
「劉備殿?いくらなんでも親子は……。それ以前に、このような手のかかる子供は困ります」
「今さりげなく酷いこと言いませんでした諸葛亮?」
と、魯粛さんが耐え切れないとばかりに吹き出した。
「いやぁ、態と激昂させて反応を、と思いましたが、……そのようなことは有りませんでしたな」
――それどころか君臣の仲を見せつけられることになろうとは。
「仲いいですか?で、……えーと、曹操抗戦派代表としてお越しになられたということでいいんですよねー?」
「そのとおり!……どうです?この話、受けていただけますかな?」
「はい。…えーっと、宜しくお願いしますねー?」
よし、これで私の役目は終わった!
……筈だ。
軽く頭を下げてから立ち上がって、諸葛亮と役目を変わる。
後は相槌打ったりするだけですねー!
「…では、」
本格的にはじまった会話の応酬に、緩みかけた気を無理やり詰めた。






。。。。。。。。
赤壁は諸葛亮さんのターンですね。
陳宮さん出しづらい。意地でも出しますが。
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