僕らの為のランゲージ

「つーかーれーたー…!」
びったーん、と寝台に倒れこむ。兵と民に挨拶回りして、劉キさんと軽く重々しい話をして、んでそれからずっと雑事(部屋片付けたりとか荷物の解体とか)やって、それで結局夜が更けかえったこんな時間に寝台にダイブするはめになったのだ。
じくじくとひびく鈍痛に眉をひそめる。
右手痛い。
なんだかんだで今日平然とした顔で仕事をこなしたせいで捻った時より痛みが増すなんて笑えないことになってしまいました。腫れてるのがバレていないのは厚着のお陰ですねー?
長袖便利、とたたんである服を見て小さく肩をすくめた。蝋燭の火を消そうと起き上がる。
と、蝋燭の仄かな光が入り口に人影を落とした。
「……あれ、諸葛亮ですか?」
私が呼ぶ事はありますけど、自分からなんて珍しいですねー?
そんな思いを込めて首を傾げると、諸葛亮が白羽扇越しに苦笑した。…ような気がする。
「少し、話がありまして…。それと、」
一度言葉を切った諸葛亮が、私の右手に視線を投げた。
「お説教、…いえ、申し上げたいことが」
意味ありげな言葉に、否が応にも確信した。
ば れ て る!
思わず寝台にもう一度倒れこみ、呆れの色を見え隠れさせる諸葛亮を左手で手招く。
「なーんでバレますかねー?…まぁいいや。どうぞ、入って下さい」
「…失礼致します」
「失礼されますー」
身を起こして、おとなしく右手を差し出した。
ごまかすように小さく笑い、寝台のそばに跪く諸葛亮に言う。
「諸葛亮の薬はよく効きますから、大丈夫ですよ!多分☆」
うんうん、と頷いてみせると、諸葛亮が隠すでもなく呆れた顔をした。
それでも手際よく患部に薬を塗りつけていくから、大したものだと思う。
「ぴゃー痛い!」
「……痛むことをするからいけないのです」
「大丈夫諸葛亮ならこの怪我すらも計算通りです」
「そんなわけないでしょう」
「ですよねー」
うん、知ってました!
「…終わりましたよ」
諸葛亮が顔を上げる。しっかりと固定された手におお、と声を漏らして、おなじみの地図を取り出す。
「…でもまぁ、赤壁には間に合いますよー?」
その場所を指して笑う。そばの寝台に視線を遣って、座って下さい?と言葉を添えた。
「失礼を」
礼をとって座った諸葛亮が、私を見据える。
「…魯粛が来ますよ」
「そうですねぇ。……いつ頃ですか?」
「一週間以内には」
「ひゃあはやい!」
思わずパチンと両手を合わせる。
呆れたとばかりに頭を振った諸葛亮が言った。
「……少しは空気を読んでください」
「あえて 空気 読まない!…略してAKY!」
「……つくづく食えない方ですね…」
「え、諸葛亮に言われるなんて私どれだけ食えないんですか?!そんなにまずい魚なんですか私っ!?」
はいはい、と強引に話を切り替えた諸葛亮が、地図上の呉を指す。
「…呉の家臣の多くが降伏を唱えているでしょう」
「降伏、ですか…、どうせ同じコウフクなら幸福でも唱えて欲しいですね!」
「…恐らくそちらのほうが恐ろしいですよ、劉備殿…」
「活躍に期待しますよ、トラブルシューター」
「…またげーむ、ですか?」
「おおっと、その情報は貴方のセキュリティクリアランスには開示されていません!ZAPしますよ!」
「……ああもう話が進みません」
「むー、市民全員が疑いようもなく幸福なTRPGの話ですよ、そんな軽くあしらわないで下さいー!……周瑜には気をつけて下さいね?」
「どうせげーむとやらの話でしょう?……わかっています」
テーブルRPG、三国風に置き換えればこの時代でも遊べる貴重なゲームなんですけどねー?
地図をそこら辺に放り投げて、ぽん、と枕を叩く。
「寝ましょう!」
珍しいことに欠伸を噛み殺した諸葛亮が、す、と音も立てずに白羽扇を置いた。
「……そうですね」

ふぅ、と蝋燭を吹き消し、暗闇になれない目で辺りを探る。
赤壁の方向をどうにか把握しようとして、出来るわけもなく失敗した。






。。。。。。。。。
次で多分魯粛さん!
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