カイ・カリーナェは功労に笑う

――曹操軍の野郎を足止めしとくぜ!

勇ましく飛び出していった翼徳を見送り、列に戻るため的盧に揺られる。
馬上で、私は敗北感に打ちひしがれていた。
「…ぐんしーず怖い…!」
翼徳が「あ、これ兄者にだってよ」ってちっさい書簡渡してくるから何かと思って開いたら、
『劉備殿へ
約束破って列を離れましたね?計算通りです。
……すみません』

ご丁寧に日付まで描いてあったよ!三日前だったよ!
完全に行動読まれてましたありがとうございました!
まあ呂布で手薄になるくらい完全完璧にお見通しだっただろうしね!
さらっと計算通りって書いてるのが諸葛亮らしいねー!

「……さて、と!」
戻れとは言われてないし一仕事しますかー?さくさくっと敵を燼滅しますよ!
…いやー、謝るべきは私じゃないのに―!
囮にしてすみませんって謝るべきは未来のぜんちゃんでしょー?
まあでも、計算で攫われたとわかれば安心かな!
殺されはしないと分かってたから使ったんだろうし、うん!
じゃあ少し趙雲のお手伝いでもしちゃおっかなー!
ココらへん伸しとけば戻る趙雲が少しでも楽になるかなーなんて思っちゃってるわけですよー!
再三言うけどすみませんね相手兵さん?優先順位は仲間>民>>相手 みたいな感じですから!
「…よっしお父さん頑張っちゃうぞー!」
的盧から降りて、兵がゴミのようになってるところに突っ込む。
そこですかさずー?

「雷 牙 連 弾☆」
雷パワー!
……あ、これ発電とか出来るんじゃ…。
呑気なことを思いながら巻物と肉まんを回収する。
あ、華陀膏だラッキー!
…さて、また遠くから来ましたねー?
それじゃ、いっきまーす!






夕焼けが滲む。
さすがに疲れたので剣をしまい、的盧の上でふぅと息をついた。
…にげきれましたねー!
先頭の劉備軍+民はもう既に逃げてるでしょう。民も無傷ですし、まあ理想的な撤退、ですね!
「……あとは趙雲達ですけどー…」
的盧をゆっくり走らせながら向こうを見る。
あんまりにも向こうばかり見ていたのであろうことかバランスを崩した。
ちょ、だっさ私!今世紀最大のカッコ悪さ!
強かに右半身を打ち付ける失態を犯してしまった。…痛い。
もうただ純粋に痛い…!
じったんばったんしていると、頭上から声が降ってきた。
「りゅ、劉備どの…?」
「あ、いや、落馬した。…おっかしいですねー…馬術には自信がある方なんですけど」
「……お気をつけ下さい」
「んー、趙雲達が何時戻ってくるかと心配で…って、」
ばっと立ち上がる。
阿斗を抱えた趙雲が立っていた。
「…怪我してないですか?」
「ええ、怪我はしていません。……おまたせしてしまいましたね」
すみません、と拱手する、その両手はボロボロになっていた。
「…趙雲?」
「なんでしょうか?」
「…怪我してるじゃないですかっ!何すぐにバレる嘘ついてるんですー!?」
腕や足の布は避けていて、その部分の怪我も察する。
「……阿斗様は怪我をしていませんよ?」
「天然ですか子守ドラゴン?!貴方なら絶対に阿斗を怪我させないことぐらい知ってます!」
腕の傷は阿斗を庇ったせいだろう。
足は馬上だったのと阿斗に気を配っていたせい。
「…先ほどの問いは私に向けて、だったのですか?」
心底不思議そうに首を傾げる趙雲に思わずため息を付いた。
「当たり前ですよー?当たり前田のクラッカー!」
ダメだこの天然子守ドラゴン!ぺちぺちと軽く頭を叩く。
「……そう、ですか」
「あーもう早く帰って治療しますよ!」
阿斗を抱えたままの趙雲の手を引く。
ズキリと右手に違和感が走った。
…捻ったー!
さっきの落馬で捻ったー!
っま、まあいいか。うん。馬乗るのキツイかもしれないけどそこはね!前全力逃走した時程の大変さじゃないでしょうしね!
的盧に乗った所で、趙雲が思い出したように肩紐を外し始めた。
「あ、阿斗はまだ抱えておいて下さい」
左手で阿斗受け取るのも怖いし、右手と阿斗に気を配るのも怖い。
うん、お願いします。
「はい…阿斗様、もう少しの我慢ですよ」
…なんか趙雲、
「私より子守上手くなってる…!」
「え、そんな、そのようなことは…!」
そこそこの速さで馬を走らせながらくだらない雑談を交わす。
馬上なので声は張り気味だ。
そうして長坂坡を超えた時、民と仲間が勢揃いで待っていた。

「おくれまして、只今ー!」
「……お帰りなさい、劉備殿」
馬から降りて、笑う。
「生還にばんざーい!」

「ばんざーい!」「ですぞ!」
「…ですぞって…」





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長坂坡終わり!
赤壁じゃー!
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