21g

結果を先に言ってしまいますとー、
追いつかれました!
まぁそれは当たり前、ですねー?逃げる速度は元と対して変わりません。
と、言うわけで手筈通りに交戦しながら逃げてます。
……分かってたけど的盧にのってるだけです。
いくら呂布さん達が居るといっても、兵力差はやっぱり痛い、というか。
多分元より投入兵力多い。
曹操軍がたぶんすごく多い。元よりも、だ。
そーそーちょっと本気過ぎませんー?
まぁ呂布と翼徳で民周囲は死守させてるんだけど、ねー?
罠も発動してないみたいだし、軍師ーズも順調らしい。
それでも押されてることには変わりないわけで。
――ああ、いやだいやだ。
ただ座っているだけが、こんなに難しいことだとは思わなかった。
難しい顔をしたまま馬を走らせていると、ズタボロの兵が一人、馬にしがみつきながら走ってきた。
「…どうしたのだ?」
「後方右が押され始めました!」
後方右を守っていたのは、呂布。
…張遼とやり合って他が疎かになったって事、ですねー?
将が居なければ、このまま崩れますね。
そして、その場所には、私の、
私の息子が。
「わかった!」
「りゅ、劉備様?!」
方向転換して、的盧の腹を蹴る。
全力で走らせると、引き止める声はあっというまに遠ざかっていった。





的盧から飛び降りると、双剣を構えてなぎ払う。
土煙に顔をしかめながら、辺りを見渡して籠を探した。

――あった!

遠くに見える、ひっくり返った籠に血の気が引いていく。
兵を相手にしながら慌てて走り寄ると、案の定、というべきだろうか。中には阿斗も女官も居なかった。
反射的に踵を返す。
「…兄者!」
的盧も忘れて愚鈍に走りだろうとした私を、後ろから翼徳が羽交い締めにする。
「ちょ、っと、邪魔です!翼徳!」
いつの間に居たのか、なんでこんなことをするのか、そんなことがグルグルと巡る。
そしたらまた、いつの間に居たかわからない趙雲が私の前に跪いた。
「劉備殿、阿斗様は私が」
「ダメです!」
元の長坂坡より、曹操軍の数はもっと多い。
一騎駆けなんて、そんな呑気なことを言ってられない。
私に、私に21グラムは重すぎる。
「いいえ、お任せ下さい!」
「趙雲が死んでしまったらどうするんですか!」
目の前の趙雲が、ひゅ、と息を呑んだのが見えた。
ぐ、と槍を強く握りしめた趙雲が叫ぶ。
「責任の重さは命の重さですっ!」
人の命は平等ではないと、趙雲は言った。
「…そんなわけ、そんなわけないでしょう!」
「劉備、様?」
翼徳の力には敵わないと解っていながら、尚ももがく。
「私と趙雲の命も、民の命も!命の重さなんて一グラムも変わりません!」
「…兄者」
悲しげにつぶやいた翼徳が、それでも力を緩めずにつぶやいた。
「……それが乱世なんだよ」
「知ったこっちゃ無いです!乱世でも太平でも、命は命でしょう!?」
趙雲が目を見開く。
改めて拱手した趙雲が、笑った。
「…劉備殿、やはり私が行きます」
「何でですか」
「貴方と阿斗様を、守りたいと思ったからです」
言葉が出なかった。
私は趙雲を見殺しにしてしまうかもしれないのに。
呆然と動きを止める私に趙雲はもう一度微笑むと、馬に乗って行ってしまった。

「…翼徳、」
「……どうした?兄者」
「趙雲は、大丈夫ですよね」
「…当たり前だぜ!」
腕を離した翼徳が、私の背を叩く。
「この俺様と、呂布の野郎と、いけ好かねぇ軍師共、それに兄者達が待ってやってるんだ」
――戻ってこないわけがねぇだろ!

思わず頬が緩む。
「そう、ですね」
彼らは酷く優しくて、心配になってしまう。





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一話一話の短さについては諦めました。
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