犠牲者の数を数えてお待ち

「げっげつえいっ!」
月英の部屋に飛び込んだ。
木材を持って何やら動き回っていた彼女が振り返る。
「孔明様、どうされましたか?」
待ってましたとばかりに持っていた書簡をつきだしてみせた。
「りゅ、劉備殿から手紙がっ」
「まぁ!……中身はお読みになりましたか?」
鋭い問いに思わず視線をそらす。
「ま、まだです…」
劉備殿が訪れてくださった時に限って二回も草廬を開けてしまっていて。劉備殿に申し訳ない。
今回の手紙も、もしかしたら無礼な行いをする軍師はいらないというような、そんなものだったら、と。そんなことは無いとわかっているけれど、不安が先走ってしまってどうにも駄目だ。
俯いてしまった私に、月英が大きなため息を付いた。
「孔明様の事ですから、そうではないかと思っていました」
「す、すみません…」
「謝ることは有りません。孔明様、私は劉備殿のことをよく知りません。ですが劉備殿はそのようなことで立腹なさるような方なのですか?」
「その様な事はっ…!…無いはずです、多分」
「ならば大丈夫です」
月英は笑って頷く。彼女がいうと本当のように聞こえるから、凄いと思う。
ああ、でも。
「……月英」
「…何でしょう?」
「ついてきてくれますか」
彼女は私に着いてきてくれるのだろうか。私のことなんか忘れて、彼女は此処に均と居たほうが幸せに暮らせるのではないだろうか。
……それは、嫌だなぁ。
でもこれは私の我儘。

「勿論です」

艷やかに笑って。背中に回る柔らかな腕にドキリとする。

「私は決めていたのです。孔明様に着いて行く、と」
貴方が未来を話したあの日からずっと。

「……月英」
「何ですか」
「あいしています」
「私もです」

私はぬるま湯を知っている。
あの甘やかな冷たい世界を知っている。
此処で生きるためにあの世界を裏切ってたくさんのものを犠牲にするけれど、それでも。

「私は幸せです、よ」





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NLです(じゅんすいなかお)

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