アプローズ記念日 後編

敵だとはどうしても思えなかった。
そもそもあんな大規模な爆発、平均的なこの時代の科学力じゃどうやっても起こせな……。

平均的、な?
「…諸葛亮、もしかして…?」
彼女の科学力じゃは平均を遥かに逸している。
あれほどの大規模な爆発が起こるとしたら、それしかないんじゃないです?
「……そうですね。おそらく彼女自身が起こした事故、です」
どうしたのでしょう、とやはり彼は少し焦っていた。

「も、申し訳ありません…!」
黙々と煙がたち込める広場から、月英さんが飛び出してくる。
彼女の白い猫耳も、煤を被って多少黒くなっていた。

「どうしたのですか?」
「その、製作中に耳が巻き込まれまして」
思わず武器を…と彼女はうなだれる。
それでアレほどの爆発を…彼女は何を作っていたんでしょうねー…?
「敵襲でなくてよかったです」
「なんだぁ。体が鈍っちまうぜ」
まじめな趙雲が安堵の息を吐いた横で、翼徳がしょうもないことをぼやいていた。
「こら、翼徳」
「だってよぉ兄者…」
ダメだこの戦闘狂。
「張飛、」
「お、なんだ呂布?」
「付き合え」
いつのまにか方天戟を持っていた呂布が偉そうに言う。
顔をきらめかせた張飛が武器取りにすっ飛んでいった。
「ならば拙者も…!」
おい雲長まで消えたぞ。それでいいんですかそれでー?
「し、失礼ながら観戦に…!」
興奮を隠し切れない顔で常識人趙雲すら消えた。もうダメですねこれは。

「……あいつら猫耳で勝負するつもりなのか?」
「…の、ようですね…」
「尻尾が、切れ…」
「大分、大分痛むでしょうなぁ?」
「私の薬で直します!」
月英さんなんか張り切る方向間違ってませんー?
「…っていつもの場所で戦ったら兵が見るんじゃないか?猫耳」
「此処に来るまでで既に見られています…もう遅いでしょう」
ですよねー、みたいなあきらめムードが漂う中、陳宮が声を上げた。
「ならば、ならばいっその事見せびらかしましょうぞ!」
「……民に?」
「一種の娯楽、ということですか……」
いいですね、と諸葛亮が頷く。
「なら私は外にでればいいのだな!!」
よしお父さん張り切っちゃうぞー!
「劉備殿はいつもどおりで宜しいかと…」
「月英の言うとおりです。ただでさえあっちにこっちに逃げ出してるんですから、これ以上はありえません」
「そのとおり、そのとおりですぞ!」
「……おーまいごっと」

肩を落とす。
ならばせめてと、修練場の方を指さした。
「観戦に行こう!」
「劉備殿はよくそうされますなぁ?」
「見るのは好きなのだ。見るのは」

自分でするのはすきじゃないけどねー!
ネコミミついてない一般兵の視線を受けながら、時には質問に答えながら修練場を目指す。
がらら、と引き戸を引く。
勇ましい声を上げて、呂布が獲物を振るっていた。
……ついでに猫耳も動かしてますけど。
翼徳の蛇矛とともに尻尾も……ん、尻尾…?
「あいつら……穴…!」
「まぁまぁ、いいではありませぬか」
「……ん」

踏み込んだ偃月刀の一閃を方天戟で流し、そのまま持ち主に踏み入る。
背後から翻った蛇矛すらもいなすと、雲長ごと巻き込んで間合いを取らせた。

ん、やっぱかなわん。

呂布の方天戟が素早く切り込み、翼徳の尻尾に―

「しっぽおおお!しっぽだめえええ!」

慌ててストップをかける。
飛び込んだ呂布が不審げに言った。

「今更尻尾程度で…」
「いや尻尾はね!尻尾はダメな気がする!!」
「うう、俺の尻尾…」
「翼徳、愛着がわいたか?」
「私の出番ですね!」
「月英…」

嬉しそうに尻尾をたてた月英さんに、はぁ…と諸葛亮の尻尾が下がる。
陳宮の尻尾はなんか揺れたり何たり忙しない。翼徳の尻尾は一部剥げた。趙雲は感動して尻尾が立っているけれど、雲長の尻尾は呆れたように水平だ。
おお、面白い…!

「では、薬を!」
なんやかんやで月英さんの薬は使われることになり、今日一日手合わせは自重すると言うことで決着がついた。

尻尾は結局穴開けたけど、午後から城下に降りるから……まぁ…いいんだ…。
とりあえず午前の政務を片付けようと、急いで自室に向かった。


「あっつい!肉まん熱い…!」
「劉備殿、おおげさ、おおげさですzあっち!」



。。。。。。。。。。。。
広げた風呂敷がたためないー!
…すみません。
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