アンダー・ザ・ローズ

「待たせてしまいましたね、申し訳ありません」
形式的な挨拶を済ませる諸葛亮さんの雰囲気が、ひっじょうに冷たい!ですねー!
もう氷点下ですよ!アイス作れますよー!

…なんて、茶化すのも戸惑うくらい怖いんだけど!
「いえ、全然気にしていないというか、押しかけてすみませんって謝る立場は私ですねー?」
「いいえ、そのようなことは」

傍らの羽扇を取って座った諸葛亮さんにあわせて、私も座り込む。
…ここからが本気のお願いタイムだっ!

「早速本題に入っても?」
「ええ、お断りします」
「あざやかな即答っ!」

人を喰ったような顔で微笑む諸葛亮さんに、さすがに気後れした。
それでも、私、負けない!
息をすいて、吐いて、じっと前を見据える。

「劉備殿、貴方では天下は取れません。…断じましょう。確固とした道を持たない方に、天下は無理です」
冷ややかな眼差しは、氷の温度を思わせた。それでもあえて、私は微笑んでみせる。
「諸葛亮さん、ここからは薔薇の下のお話です」
「薔薇の下、ですか?」
「バラの下でのお話は秘密のお話、って、いうじゃないですか?」
胡乱げなものを見る目つきの諸葛亮さんに続けた。
「…実は私、歴史を壊すって決めてるんです」
阿呆を相手にするように、厭わしい様子で諸葛亮さんは言う。
「……それを私に告げてどうしたいのですか?」
「手伝ってくれませんか?」
彼は呆れたように立ち上がった。
「お断りします」
慌てず騒がず、奥に戻ろうとした諸葛亮さんに告げる。
「長坂坡で曹操が攻めてきます」
「…」
「命からがら逃げ切りますが、今度はもっと大きな大軍を持って曹操が呉に攻め入ります」
諸葛亮さんが振り返った。
「……貴方、何を」
「呉と同盟を組み、赤壁で……うーん、これ以上はやめておきましょう」
「…劉備殿、それは予測ですか?」
「いいえ?」
ひそり、揺らめいた瞳にゆるりと口の端を吊り上げる。

「未来のお話、です」

羽扇の下の顔は見えない。
「…未来、――貴方には未来が見えると?」
「未来なんて見えませんよー!私にわかるのは“歴史だけ”です」
彼は僅かに目を見開いた。
「まさか、貴方」
「ええ、未来人ですよ?元、ね」
諸葛亮さんは平静を取り戻すようにまばたきをして、羽扇をゆるく動かす。
「そして貴方は歴史を壊す事を選んだのですか。……何故?」
「幸せになりたいじゃないですか」
「……理想論だ」
「ええ、甘美な空想かもしれませんねー?でも、諦めるのは癪でしょう?」
「だから、私が欲しい、と?」
大きく頷いた。
「その通り!……夢を見続けるには現実を見なければならない」
諸葛亮さんはわざとらしくため息を付く。
「随分と、強引で強欲な方ですね」
す、と、羽扇が私に向けられた。
その顔を見て、確信した。
貴方は着いてきてくれる。
「…貴方は夢を見て下さい、私は現実を「あ、それはちょっと……」
諸葛亮さんは顔をひきつらせた。
「何故ですか?」
「だって私、夢も現実も見たいですから」
「……は?」
「だってどちらかだけじゃ寂しいでしょー?うちはみんなでどっちも見ます」
ふ、と口の端をゆるめる。
「…本当に、欲張りな…」
「嫌ですか?」
「いいえ」
思わず破顔した。詰めていた息を吐き出して、ぐっと身を乗り出す。
「ありがとうございますっ!」
彼の手をとって、立ち上がる。
「これから死ぬまで宜しくお願いしますね!」





「ちんきゅー!」
「…おお、おお!諸葛亮、諸葛亮殿ですかな?」
「ええ。陳公台殿、ですね?」
「そうです、そうですぞ!優秀な軍師が増えて私も少しは、少しは楽になるでしょうなぁ…」
「少し、ですか?……いえ。何でも」


……あの二人胡散臭い…!





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広げた風呂敷がたためない!
ぐんしーずは仲いいです。
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