ダストシュート | ナノ

法正成代


書こうと思って途中で挫折したやつ。



私が私であれたなら、地位なんて要らなかった。
されども私の行動一つが、とある人を救うのだとずっと前から知っていた。
「益州、差し上げますよ」
自らを悪党と評するのも、嫌味な表情も、言葉も、動きも、吐息一つでさえ。
私を護るための虚像、私が逃げるための偶像。
けれど、私は私が一等嫌いなのだ。
至高の才を有する臥竜よりも、相対する乱世の奸雄よりも。
そんなこと、誰もしらないのだろうけれど。
――ああ、わたしはほんとうに悪党なのかもしれない。
くすり、と自嘲してみせた。とびらの外から覗く空は、前と同じなんかでは全然なくて。
宵闇に浮かぶいつもどおりの曇り空に、みんな同じ空の下なんて事はないのだと今更ながら思った。
乾いた地面にはほんのりと蝋燭の明かりが落ちていて、こんな時間まで起きていたことがまたばれるだろうな、と思い至った。
…どう言い訳をしてみせよう?
白羽扇の彼の、鋭い言葉を思い描いて、小さく目を伏せる。
彼は私が嫌いなのだ。
……“法正”は彼を嫌っていたし嫌われていたから、それが正しいのだけど。
「…やっぱり、死んでしまいたい」
早く病気になりたいなぁ。なんて。
…ううん、さすがに不謹慎かな。
ふ、と笑って、明かりを消した。

眠るように死んでしまえたらいいのに。

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2014/03/12 16:46
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