ダストシュート | ナノ

アクロマ成代(pkmn)


ピユーン、と言うような、なんとも言えない鳴き声を上げて擦り寄ってくるロトムをちらりと見て、ふぅ、と息をつく。
久しぶりに船から降りた。地面の感覚に軽く足踏みして、歩き出す。
ヒウンシティ。イッシュモチーフマンハッタンの面影を最も色濃く残す場所。
熱気のこもるビル郡とコンクリートの照り返し。カンカン照りの夏だった。
熱気が体を蝕む。

隣で物音がした。首を横に向けると、ロトムがホースを構えてこちらを向いていた。頭に水でもかけるつもりなのかと思ったが、そうではないようで。
「……ッ!」
濃紺の髪、こちらを睨みつける赤い瞳。
――彼は。
ずんずんと近づいてきた彼に、ロトムが前にさっと躍り出た。

「おい、アクロマッ!」
……アクロマ?
私はアクロマなのだろうか。アクロマでは無いのではないか。
否、私は確かにアクロマだった。答えがわかっていながら、その理想を確かめるために研究に没頭した。答えはあのトレーナーしか知らないとわかっていながら、それでも抑えきれずに。
……只、世界が滅びようと構わないなんて意思は、これっぽっちも持ってなかった。
そうしなければならないとわかっていながらプラズマ団に入るの内心渋ったのも、ポケモンを無理やり操る研究に逃げ出したくなったのも、そのせいだ。
でも、だから何だというのだろう。
“アクロマ”のように強い信念を掲げるのでもなく、流されるだけ生きて、なに言い訳を重ねているのだろう?

「…オマエにも信念があったんだと思う、でもッ」
「やめてください」
「でもッ「やめろといっているでしょう!私にそれはありません!」
私には信念なんて無い。“アクロマ”になれない私にはそんな言葉を言われる資格はない。
物言いたげな視線から逃れるように下を向く。色濃い影が落ちていた。
「…………何を悩んでるかしらねぇけど、もう少し自分に素直になってもいいんじゃねぇの」

彼は一体何を言っているのだろう。さっさと怒ればいいのだ。私も一応プラズマ団のボスだったのだから、俺は今から怒るぜとでも言っておけばいいのに。

「オマエひどい顔してるぞ。少し休めよ」

残酷な優しさをにじませた声に、顔を上げない。
雑踏と太陽光すら私を責めているような気がした。
「じゃあなッ。……いきなり呼び止めて悪かったッ!」
重苦しい沈黙に耐えられなくなったのだろうか、足早に去っていく彼を虚ろに眺める。

ピユユーン。ロトムが私の顔を覗き込んだ。
青い雷に包まれたその体に触れる。少しびりりとする程度だ。ひんやりとした温度が指先に伝わる。
いまいち頭が働かない。

ああ、
「――疲れた」
「帰りましょうロトム」
「なんだかひどく、疲れました」



。。。。。。。。。
アクロマさん可愛いですよね!
ゲーチスさんも大好きですっ!
ゴーストタイプかわいいよゴーストタイプ

comment:(0)
2014/02/17 19:21
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