「おつかれー」

朝練を終えて部室を出ると俺の隣に浜野が並んだ。そして速水もその横へ続く。おつかれと浜野に返すと、速水がどこかほっとしたように息を吐いた。きっと2人とも昨日のことを心配しているのだろう。確かに部活を終えて家に帰ったときは落ち込んでいた。だけど今はそれが何だか馬鹿馬鹿しく思えてしまう。俺達の前から姿を消した南沢さんは、今は俺の家にいる。とりあえず学校へは欠席の連絡を入れた。いつも通りとは違うけれど、こうして俺は今も南沢さんと一緒にいられるんだ。

他愛もない話をしながら教室へと辿り着く。朝練で疲れた体はきっと今日も1日保つことはできないだろう。軽いカバンをそのまま机の横に掛けると、俺はさっさと机に突っ伏した。別に寝るつもりはないけど、こうしてると楽だし。そう思った瞬間、もそりと頭が動いた。脱力していたはずの体が途端に強張る。

まさか。

「…南沢さん?」
「それくらいでへばるなんて体力ないな」
「えっ、ちょっといつから俺の頭に!」
「今。ずっとカバンに入ってた」

なんてリスキーなことをしてくれるんだこの人は。内心青くなりながら、俺はゆっくりと起き上がった。髪の毛が引っ張られる感覚。おそらく南沢さんが掴まっているんだろう。

「お前ん家で1日留守番とか暇だろ」

だからといってカバンから出てきて机の上まで上ってくるなんて危ないにも程がある。キョロキョロと辺りを見渡すが誰も見ていなかったらしい。俺達に意識を向けている人は誰もいなかった。ほっと一息吐く。

「絶対出てこないで下さいね。面倒臭いことにしかならないですよ」
「ああ、わかってる」

声だけで南沢さんが笑っているのがわかる。この人はこの状況を楽しんでいるのだ。なんて図太い神経。

「それにしても」

南沢さんが俺の髪を小さい手で梳きながら呟く。

「目玉親父って結構大変だよな」

俺は鬼太郎じゃねえっての。








「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -