重い足を引きずって、部室へと帰る。既に着替えを始めていた速水が心配そうな視線をちらと寄越した。だが俺はそれに応えたりはせず、ただ動くことを拒む腕を無理やり動かしてロッカーを開く。ユニフォームを乱暴に脱ぎ捨てて、中からぐしゃぐしゃのシャツを取り出して羽織ると、一つ、おおきな溜息を吐いた。隣で着替えていた速水がピクリと肩を震わせる。

「くーらま」

脳天気な声が聞こえると思ったら、それと同じくらいの軽さで肩を叩かれた。振り返らなくてもわかる。こいつは浜野だ。

「何だよ」

不機嫌丸出し、そんな声で返事をすれば浜野は一瞬苦笑いを浮かべた。けれどすぐにまたぱっと笑う。こいつの明るさは、時々羨ましい。

「このあとさ、俺と速水とお前で釣りしに行こう!」
「…、わり、今日は帰る」

学ランに腕を通し、カバンを肩にかける。
浜野が気を使ってくれたのはわかる。だから、当たってしまわないようにそそくさと部室を出た。素直に謝る俺が珍しかったのか、それともこのテンションが珍しかったのか、浜野も速水も黙ったまま何も言わなかった。



雲一つない空は真っ赤に染まっていた。







「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -