母さんの持ってきてくれたお菓子を摘みながら宿題を再開する。元の大きさに戻った南沢さんは部屋に放ってあった漫画雑誌をペラペラとめくっていた。何となくこの沈黙が嫌で、俺は「南沢さん」と呼びかけた。南沢さんは漫画から視線を上げると、真っ直ぐ俺を見た。

「その、あの日みたいにまたミニサイズに戻っちゃいますかね」
「ああ、あの日は明け方に突然また小さくなったな」
「へぇ。……南沢さん初めて自分からあの日のこと話しましたね」
「……いいだろ。気分」

あ、また照れた。再び漫画雑誌に視線を落とした南沢さんを見て俺はくすくす笑う。あんまり好きとか言ってくれないし、むしろつれない時の方が多い南沢さんがちゃんと俺のことを好きでいてくれたんだと思うと胸がいっぱいになる。むしろこの喜びをどうしたらいいのかわからない。

「南沢さん」
「何?」
「抱きついてもいいですか」
「は?…うわ、ちょ、倉間!?」

バサバサッと音がして、南沢さんの持っていた本が落ちる。久しぶりにちゃんと南沢さんの体温を感じた気がする。小さい南沢さんは抱き締めたら潰れてしまうし、元の大きさに戻ったときも俺の上に落ちてくるだけで俺から触れることはなかった。しかし俺のその幸せも一瞬で崩壊してしまう。

「!?」
「え、また?」

先程とは逆のパターンである。抱き締めた次の瞬間に、再び小さくなった南沢さんは床に尻餅をついていた。南沢さんはまだ何が何だかわかっていないようで、普段はあまりしないような呆けた表情のまま動かない。俺も暫く呆然としていたが、思い至った一つの仮定に溜息を吐いた。

「アンタの体にゃ一体何が起こってるんですか…」
「……まったくだよ…」







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