「はよ」
「倉間おはよー。今日はサボリ?」
案の定俺は今朝寝坊して朝練に出られなかった。そんな俺を揶揄するように浜野はニヤニヤと笑う。小さく溜息を吐いて素直に寝坊と告げると笑われた。仕方ないだろ夕べはいろいろあったんだ、なんて言えるはずもなく、俺は不機嫌な顔を作って席についた。口を尖らせながら頬杖をついて外を見る。青い空に浮かんだ雲がゆっくり流れていく。
「結局何一つ解決しないし」
「俺のこと?」
頭上から聞こえてきた声に溜息まじりにそうっすと返事をする。そう、今朝寝坊したと飛び起きた俺の隣に南沢さんの姿はなかった。
「何でまたそのサイズに」
「……」
南沢さんは、またミニサイズになっていた。何か思い当たることはないかと南沢さんに尋ねてみるが曖昧な表情と否定の言葉しか返ってこない。それは夕べと同じだった。何もないならないでそれで良い。ただ、南沢さんの表情が引っかかる。多分、何かある。
「…………」
けど俺が南沢さんに口で勝てるはずがない。それ以前に南沢さんに勝てる要素を思いつけない。自分で言ってすごく悔しい話だけど。
「ぶっ、変な顔」
悔しさに歪ませた俺の顔の前に突然逆さまで現れた南沢さんが小馬鹿にしたように笑う。何か文句を言ってやりたかったけど、フリーズした頭じゃ何も思いつかなかった。ただ、驚いた拍子に南沢さんを落とさなかった俺を誉めてほしい。
「倉間、」
「なんすか」
「……ありがとな、俺のことで悩んでくれて」
そう言った南沢さんは照れたような、けれどどこか申し訳なさそうな顔で微笑んでいた。