木々の間から見える濃紺の空には無数の星が散らばっていた。木の根元に腰掛けて、それをただぼんやりと見つめる。そして短い期間だが自分がこのゴッドエデンにいたときのことを思い返していた。あの時は、と剣城は思う。間違っているとか、それが酷いことだとか、そんな考えは微塵もなかった。そう、今の白竜のように。ただ兄さんのために、強くなりたかった。けれど今はこうして円堂率いる雷門の一員としてそれに立ち向かっている。孤独を好んだ過去。それがどうして。白竜に馬鹿にされたときに腹が立った。ナカヨシコヨシ。違う、そんなんじゃない。そんな子供じみた一緒にいるだけの存在じゃない。

「……俺らしくないな」

自嘲するように笑ったそのとき、後ろからガサリと音がした。はっとして振り返るとエメラルドグリーンの瞳と目が合った。

「不動さん」
「よぉ」

口元に微笑を浮かべたまま、不動は剣城の隣に腰を降ろした。剣城は少しだけ身を堅くして視線を何もない前に向けた。

「『俺らしくない』って、何?」
「…別に、何でもないです」

独り言を聞かれていたことに内心冷や汗をかく。しかし不動はそれ以上問い詰めることはせず、ふぅん、と一言言っただけだった。拍子抜けした剣城がそっとその姿を窺い見ると、不動は木に背をもたれさせ、片膝を立てそこに肘を載せている。そして目を細めながら空を見上げていた。時々長い髪の毛が風に揺れる。その横顔は整っていてすごく綺麗で。

「仲間に囲まれて過ごす毎日に何か不満でもあるわけ?」

此方を向かず、そのままの体勢で唇だけが動く。ふとそれが剣城に向けられた質問だと理解して、慌てて前に向き直った。それからすべてを見透かされていたことに体が熱くなる。

「ない、です」
「1人もいいけどよ、仲間ってのも悪くないもんだぜ。そうだろ?」
「………はい」

剣城の返事に不動は目を閉じて小さく笑った。不動の言葉は何故か説得力があって、剣城はもしかしたらこの人は自分と似ているのかもしれないと思った。そして同時にそれでも信頼し合える仲間がいることを羨ましいとも思い、しかし突然雷門イレブンが剣城の頭をよぎる。ああそうかと気分が軽くなった剣城も空を見た。先程見た空より美しい気がする。

「よし。冷える前には戻ってこいよ」

そう言って不動は剣城の頭をぽんぽんと叩くと立ち上がり背を向ける。そして再びガサガサと音を立てて木々の向こうに消えてしまった。

残された剣城は不動に触れられた頭を押さえ、それから照れくさそうに表情を歪めたのだった。









剣城くんが不動さんに淡い恋心を抱いていたら可愛いと思うのです
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