▼勘違いなんかじゃない
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その日の昼休み、俺は女子に呼び出された。待ち合わせ場所の中庭へ向かうと、可愛らしい女の子が恥ずかしそうに待っていた。


「あの、我妻先輩…」

「君みたいな可愛い子に呼び出されるなんて驚いたよ〜話って何かな?」

「竈門先輩って彼女いるんですかぁ?」


今竈門って聞こえたけど聞き間違え?俺の名前は我妻なんだけど、もしかしてまたなの?また炭治郎が目当ての子なの?てかなんで皆俺に聞くんだよ!仲良いけどさあ!炭治郎に直接告白すればいいじゃん!結局するんだし、俺のこと経由しないでよ!


「イナインジャナイカナ」


確かに炭治郎は優しくて良い奴で俺が女の子だったら付き合いたいとか思うよ?でも呼び出されて行ってみたら全員炭治郎が好きってどういうことなの?

めそめそしながら教室へ戻ると炭治郎はヒロインの名前ちゃんと一緒にお弁当を食べていた。俺がこんなに可哀想な目にあったというのに、炭治郎はヒロインの名前ちゃんと楽しくご飯ですか!

大きな溜め息をついて二人の元に行くと、ヒロインの名前ちゃんは優しい声色でどうしたのかと聞いてくれた。


「ヒロインの名前ちゃ〜ん!俺のこと心配してくれるなんて優しいなあ〜!惚れ直しちゃう!」

「ふふ、善逸くんは今日も面白いね」


愛らしい笑顔を向けられてまたぬか喜びしそうになるけれど、きっとヒロインの名前ちゃんも炭治郎が好きなんだろうな。俺と話している時よりも炭治郎と話してる時の方が楽しそうに見えるんだもん。

愛の告白をしてもスルーされるため、最近はもう脈がないんだと悲しくなる。


「俺ってなんで彼女できないんだろ」


そう嘆くと炭治郎は俺を憐れむような目で見てくる。やだやめて!その目嫌い!


「善逸くんは誰彼構わずだから…」

「そうだな、ヒロインの名前の言う通りだと思うぞ。善逸はもう少し誠実になれ」


グサッときたよ?俺だってヒロインの名前ちゃんだけを想ってたいし、いつか振り向かせられたらなって思ってはいるんだよ。

昼休憩も半分過ぎた頃、炭治郎は先生に呼ばれているからと言って教室を出て行ったため、ヒロインの名前ちゃんと二人きりになる。

このタイミングで二人きりって気まずいなぁと思っていると、ヒロインの名前ちゃんも気まずそうな顔をしている。空気が重たい。


「…ふ、二人きりってあんまりならないから緊張しちゃうなぁ〜」

「善逸くんでも緊張することあるんだね」

「好きな人といたら緊張するでしょ!」

「…誰にでもそういうこと言うのやめた方がいいよ、勘違いされちゃうよ」


ヒロインの名前ちゃんは少し困ったような顔をしながら、無理して微笑んでそう言った。勘違いされるってどういう意味だろう。


「勘違いってどういうこと?」

「…善逸くんが私のこと好きなのかなっていう勘違いだよ。ぬか喜びしちゃうから」


いやいや、勘違いじゃないからそれ。俺が今まで言ってきた言葉もヒロインの名前ちゃんにとっては全部届いてなかったんだろうか。


「確かに俺は自分で言うのもなんだけど女の子に対して優しいし可愛いとかすぐ思ったこと口に出しちゃうけど、好きって言葉はヒロインの名前ちゃんにしか言ってないよ!」

「……信じられないよ」


そう言われた瞬間、俺はふわりとなびくカーテンの端を掴み、自分とヒロインの名前ちゃんのことを覆い隠した。そっと口付けると彼女は顔を赤くして俺のことを見ている。


「これで信じてくれた?」


ヒロインの名前ちゃんは口元を抑えながら、こくりこくりと頷いて嬉しそうに笑ってくれた。


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