▼あっけない恋でした
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私には想いを寄せる人がいる。その人は歴史の教師である煉獄杏寿郎さんだ。生徒でありながらも教師を好きになったきっかけは単純だった。入学式でまだ教室も分からず迷っていた時に煉獄先生が私に声をかけてくれたから。その日から煉獄先生のことを目で追ってしまい、その度によく目が合った。

教師だからというのもあるけれど煉獄先生はとても優しくて、友達からも煉獄先生がよく私のことを見ているという話を聞いて、正直先生も私のことを少しは気にしてくれているのでは?と自惚れてさえいる。


「煉獄先生、今お時間よろしいですか?」

「ああいいぞ!何か授業で分からないところでもあったか?」


そう言って煉獄先生に歴史の授業で使う教材がしまわれている準備室へと招かれる。休み時間などをここで過ごしているせいか、この部屋はほのかに煉獄先生の香りがする。

机に向かいあって座ると、煉獄先生はどこが分からないんだ?と聞いてきたので、私は緊張のあまり下を向きながらスカートをぎゅっと握りしめた。


「わ、私…煉獄先生のことが、好きです!」

「むぅ。それは本気なのか?」

「もちろんです!ただ先生とどうなりたいとかそういうことではなくて、この気持ちを伝えたくて…」


返事がなく私は恐る恐る顔を上げ煉獄先生を見た。すると彼はいつものように感情が読めないような表情をしているが、とても怖く恐ろしく感じた。本能的危機感とでも言うのだろうか。ゾワッと鳥肌が立ち、私は思わず椅子から立ち上がった。


「そうか、本気ならば俺も答えなくてはならんな!ヒロインの苗字!聞いてくれるか?」

「は、はい…」


首を縦に振らないと殺されてしまうのではないかと思うほどの殺気を感じる。煉獄先生はいつも優しくて、私のことを目で追っていて、私と同じ気持ちだと思っていたのに。どうしてそんな目で私を見つめてくるの?


「正直に言おう!俺は君のことが嫌いだ!今すぐ殺してやりたいくらいに!」

「こ、殺すって…え、なんで…」

「信じられないかもしれないが、君は遠い昔、俺の大切な仲間たちを殺した!だから俺はアイツの生まれ変わりであるヒロインの苗字が憎くて仕方がないんだ!」


何言ってるの?歴史の教師だとはいえ、遠い昔だとか生まれ変わりだとか意味が分からない。もしかして頭が狂っているのか。

私が理解出来ず困惑していると、煉獄先生は少し眉尻を下げて悲しそうに言った。


「教師である以上、ヒロインの苗字にはこれからも誠実に接しようと心掛けるが君に好意を抱くことは一生ない!諦めてくれ!」


殺意が籠った目で見つめながらニコリと微笑む煉獄先生を見て私はぽろりと涙を流す。前世の記憶だなんて非科学的だけれど、煉獄先生が嘘をつくとも思えない。

私が好きになった相手は、私のことを殺したいくらい憎んでいた。


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