▼私の可愛い先生
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不死川先生の逞しく厚みのある腰に抱き着く。すると先生は鬼のような形相をして、私の頭をがっしりと掴み引き剥がそうとする。女子供には優しいはずの不死川先生だが、私への扱いは別みたいだ。
「止めろ!離れろ!ここをどこだと思ってんだテメェは!」
「学校の廊下です!先生!」
「分かってんなら、こんな場所で抱きつくんじゃねぇ!とっとと離れろ!」
ここじゃなければ良いのかと問えば、先生に軽く頭を小突かれる。痛いです先生。でも否定の言葉がないってことは他の場所なら良いってことですか?そうなんですか?なら早く場所を移しましょう!
「先生!どこならいいのでしょうか?」
「どこでもダメに決まってんだろ!」
頭を左右からグリグリされて涙が出そうなほど痛かったが、先生の手が私の頭を触れているということは、頭を撫でられているのと変わらないのでは?と思い幸せに感じた。
だがそんな幸せも始業を告げるチャイムによって終わりを迎えた。そして不死川先生は私の背中をバシッと叩いて教室へ行くよう急かしてくる。だが次の授業は数学。そう、不死川先生を1時間めいっぱい堪能できるという至福の時間なのだ。
(不死川先生、眉毛が短くて可愛い!瞳孔が開きっぱなしの瞳も素敵だ!ゴツゴツした手で黒板に文字を書く姿もカッコイイ!)
「ヒロインの苗字!!!!!!」
頬杖を付きながら不死川先生を見ていると、急に名前を呼ばれたため驚いて立ち上がる。ズカズカと近寄ってきてくれたと思いきや、教科書で頭を叩かれた。
「俺の授業中にぼーっとするとはいい度胸してんなぁ、ヒロインの苗字」
「不死川先生のことを見ていただけです!」
「授業中なんだから黒板見てろ!」
さっきよりも頭を強く叩かれ、強制的に座らされた。怒っている姿も美しいです、先生!そんなことを考えていると、心の声が聞こえたのか先生にギロッと睨まれる。
授業終了のチャイムが鳴ると、不死川先生は私に残れと一言言って教材を片付け始めた。他の生徒はそそくさと足早に教室を後にする中、仲の良い善逸に殺されないように気を付けろと心配された。
「大丈夫だよー、不死川先生ってああ見えてとても可愛いから」
「ヒロインの苗字!無駄口叩いてねぇでこっち手伝え!あと我妻はさっさと帰れ!」
そう言われて善逸は走って教室を出ていった。意外と嫉妬深いから善逸と仲良く話してたことに嫉妬した?
「こっち見ながらニヤニヤすんじゃねぇよ」
「大丈夫ですよ、先生!私はいつも先生のことしか考えていませんから!」
「お前の頭は大丈夫じゃねぇみてぇだな」
先生は呆れたようにそう言って、私の額を人差し指でつついた。だって先生のことが好きなんですと私が言うと、先生はふふっと笑って知ってると返してきた。
「これを運ぶのを手伝え。今日の授業でぼーっとしていた罰だ」
今日の、ではなく数学の授業がある度に同じような理由で授業で使った教材の荷物運びを手伝っていた。だがこうして先生といる時間が増えるのでとても嬉しい。だって二人きりじゃないと優しくしてくれないから。
「恋人扱いしてくれない先生も真面目で好きですけどね」
と、間違えて声に出していたことに気付き、私は焦って口元を押さえた。チラッと不死川先生のことを見ると、少し困った顔をしてから私の顔を覗き込んだ。
「お前のこと、ちゃんと好きだからな」
そう言って先生は私の頬に軽くキスをして、赤くなった顔を隠すようにふいっと顔を背ける。そんな先生が愛しくてたまらなくなり私は先生に抱きついた。
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