「そめおかくん、」
俺の名前は、こんなにも柔らかいものだったか。
どちらかと言うと、強面の俺のようないかついイメージが絶えなかったように思うのだ。
誰に呼ばれても、何処かしら角張っているような、そんな印象が強かった。
「そめおかくん、」
でも、そんな名前も吹雪が呼べば何だか雪のようにふわふわとしてあっという間に融解してしまう。
その線の細さだとか雪原の如く白い肌、雰囲気なんかもひっくるめて吹雪自身が儚いような危うい印象を俺に与える所為もあるのだろう。
とにかく、吹雪に呼ばれる俺の名前は何処までも柔らかい。
何故こんなことをこの場で述べているのかと言うと、嫌悪感が理由でだとかそんなものではないのだ。
ただ、俺の名前を嬉しそうにして呼ぶ吹雪がいとおしくてしょうがないのである。
そんなこと恥ずかしくて、絶対に言ってなんかやらないが。
(…そめおかくん、染岡くんてば)
(無視って結構辛いんだよ?)
(…無視なんかしてねえよ)