君の笑顔の理由になりたい


道がオレンジ色に染まる、夕方。

何の変わりばえもないそれが、ひどく輝いてみえる。
そこに二人分の足音だけがひびくことで、よりいっそう気分が浮いた。

無言で歩く私たち、ふいに視界のはしに小さな公園が入って、足を止める。

いち早く気づいた彼も私に合わせて足を止めた。

「どうしたんだよ?」

「ね、この公園懐かしいね。小さい頃よく遊んだよね」

指を指せば、彼も公園を見た。
ああ、と小さく呟く彼は、その口に薄く笑みを浮かべる。

「そうだな。随分前の事なのに、良く覚えてたなー」

「当たり前でしょ、私を誰だと思ってるの」

「え、ただのあほじゃねーの?」

「ちょ、失礼な」

くすりと笑って、彼は
を細めた。

「お前、あそこで転んだよな」

ポケットから手を出し、平助はブランコの前を指さす。

「..よく覚えてるね」

「俺をなめるんじゃねーって!」

太陽のように笑ったその顔が小さい頃の無邪気な笑顔と重なって、私も笑った。

そこで、急にすっと彼の表情が氷のようなものに変わる。

「あの頃は楽だったよ、何も考えずに遊んでるだけだったしさ」

何処か遠くを見つめるように、平助は呟いた。

「お前はいいよな、いつも楽そうで」

空気は一転、冷たい温度が私を包む。

昔の事を思い出してしまったのだろうか。

平助は、物事を深く受け取ったり、言葉やささいな事に敏感で。

何気ない言葉にも、裏があるのではないかと無意識に探ってしまう。

そしてそれによって生じるストレス。

おまけに少し短期な平助は、それを表に出さないようにしているらしい。

けど、小さい頃から一緒で、全てを知っている私には、それを隠さない。

要するに、日頃ためにためこんだ怒りや鬱憤、疲れを吐き出せるのは、私だけ。

またかと思いながらも、人より特別という優越感さえも覚えている私は相当の変人だろう。

「そうだね、」

二人の影が、公園に長く伸びていた。




to be continue



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