私の知らない君がいた


ピピピピピ...

しつこくなる目覚ましにしぶしぶと体を起こす。
ぐあんぐあんと音が響いているかのような頭の痛みに無意識に顔をしかめた。
枕もとの携帯に一瞬目をやって、沈んだ気分のまま支度をはじめた。

どこかボーっとしていたせいか、いつもよりほんの少し人数の多くなった教室の扉をくぐる。
もはや悩みの種といっても過言ではない彼は、朝練で不在のようだ。
今日これからの彼への接し方を考えるのもおっくうで思わずため息をついたとき、前の席の椅子が音を立てて引かれる。
「どうしたのため息なんてついて。もしかして藤堂と夫婦喧嘩ー?」
「いや、夫婦じゃないけど」
どかりと勢い良く引かれた椅子に腰をおろす親友。
図星をつかれた私はもっと憂鬱になって元から俯き気味だった顔をさらに俯かせた。
「え、ほんとなの?珍しいこともあったもんだねー」
びっくり、といかにも顔に出して驚く彼女に、まあねと小さく返事した。
「仲直りは?」
「...したいんだけどね」
「ま、どっちかがきりださないと仲直りなんて出来ないんだからね。早いうちにきりだしなよ。
これで幼馴染終了、なんて、嫌でしょ?」
真剣に、なだめるように言う彼女に、かなわないと思いながら首を縦に振った。
そうか、どちらかがきりださないと。
満足げに笑う親友に、恐怖心を捨ててきちんと平助と向き合おうと心に誓った。



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