握ってほしいなんて贅沢は言わない



どちらからともなく歩き

出して、なんとかいつも

通りになった平助は何処

かぼんやりとしていた。

先程の重い空気が何とな

く気まずくて、何も言葉

を発さないまま並んで歩

く。

もう慣れたその無言の空

間さえも愛しい。

こうして一緒に歩くだけ

でも、その時間はひどく

大切に思えて。

いつも人気者で〈皆のも

の〉な平助が、今だけは

〈私だけ〉の平助なのだ

と、そんな錯覚さえ覚え

る。

平助にどんな事をされた

って、私は彼だけを愛す

る事ができる。

そんな事を考える位、私

はこの空気に酔っていた

。段々と近づいてくる自

宅に、少し肩を落とした

時。

ふと、平助と私の手が小

さく触れた。

少し恥ずかしくて顔に熱

を感じる。

それをごまかすように視

線を流して平助を見れば

、何事もなかったように

俯き気味に足を進めてい

る。

意識してるのは私だけな

のかな、そう思った途端

、やりきれなくなって視

線を地面に戻した。

どんなに近くにあっても

繋がりあう事のない手と

手の距離が、私達の関係

を表しているようで目頭

が熱くなった。



to be continue





  戻る


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -