こんな始まりの恋もあり?



(現代パロ)


張飛は家庭教師の仕事も一段落し、休憩していた。
明日は連休なので、なるべく仕事は残さないよう仕事の配分を考えていた時であった。
「張飛先生…ちょいといいか?」
「どうしたんだ夏侯淵先生、何か用か?」
体育教師の夏侯淵が話掛けてきた。
「あのさ、今日、張飛先生の所に泊まりに行ってもいいか?」
「えっ、泊まりたいのか!何でまた?」
夏侯淵の言葉に張飛は驚いていた。
まあ、仲が良いから問題はないのだが。
「実は、惇兄と喧嘩したから一緒に居たくないんだよ…」
「ああ、だからか。朝から機嫌悪かったのは」
張飛は納得した。
「だから、泊まりたいんだけど駄目か?」
夏侯淵はもう一度、張飛に問い掛けた。
「いいぜ、連休だし、ゆっくり酒でも飲んで一緒に過ごすのもたまにいいな。ただ、ちょっとな…」
「何か問題でも?」
「部屋が散らかっててな、少し掃除しないと駄目だ…」
「なら、手伝うから良いだろ?」
「それなら構わないぜ…」
「やっばり、翼徳は話が分かっていて大好きだぜ…」
夏侯淵は張飛に抱き着いた。
「ちょっ、加減しろよ。苦しいだろうが!」
「あっ、すまない…」
夏侯淵は直ぐさま力を抜いた。
「とにかく、仕事が終わったら一度家に帰って泊まる荷物を持ってうちに来いよ」
「分かった、じゃあ、準備ができたら連絡するから…迎えにきてくれよ」
「俺様に迎えによこすたあ、調子良すぎだ。妙才がそう言うなら迎えにいくぜ」
二人はこれからの事の話を決めた。
校内にチャイムが鳴り響いた。
もう休憩する時間が終わり、次の授業をやらなくてはならない。
「それじゃあ、またな…」夏侯淵は張飛から離れると自分の席に向かい仕事を始めた。
張飛は溜息一つついた後、教材を持って教室へ向かう為、職員室を出て行った。
それから1時間後、授業も終わり、下校時間になった。
時間が過ぎるのも早いと感じた。
張飛は職員室に戻ると帰る準備をし始めた。
「翼徳…ちょっといいか」
「何だ、雲長…?」
「これから一緒に飲みに行かないか?夏侯惇先生や張遼先生も同席なんだが…」
「ごめん、実は先約があって飲みに行けない。また今度さそってくれよ…」
「珍しいな酒が大好きなお前が断るなんて」
「仕方ないだろ、急に用事が決まったから断れないしな」「そうか、また暇な時に一緒に飲もうな…」
「ああ…」
(ごめんな、雲長…)
張飛は関羽の誘いを断ると急ぎ帰る準備を済ませると自宅へ帰宅した。
某所にあるマンションに戻った張飛は自分の部屋に戻ると直ぐさま荷物を置いて部屋の片付けを始めた。
床に脱ぎ捨てていた洗濯物をカゴに入れて、空になったビール缶を片付けていく。
あまり散らかっていない為、片付けにはあまり時間はかからなかった。
それから暫くしてから張飛の携帯が鳴った。
張飛は直ぐさま携帯を開くと夏侯淵からメールが届いていた。
『駅前の時計台の側で待っているから迎えにきてくれ』
メールで待ち合わせの場所が明記されていたので張飛は車の鍵を持って部屋を出た。
ドアに鍵を掛けて駐車場に向かい、黒色の車に乗り込みシートベルトを掛けた。
エンジンを掛けて張飛は目的の場所へと車を走らせた。
暫く車で移動していたら駅前にある時計台が見えてきた。
張飛は駅前の近くに車を止めて夏侯淵の元に駆け寄る。
「待たせたな…」
「いや、そんなに待ってないから気にしてないぜ…」
「張飛先生が好きなビールを買ったから一緒に飲もうぜ」
「ああ、それはいいな…荷物持つぜ。貸しな」
「悪いね〜、じゃ遠慮なく…」
夏侯淵は張飛に荷物を渡した。
「泊まるのは一泊だろ?何だこの荷物の量は…」
「何言ってるんだ。この連休は張飛の家に泊まる為の荷物なんだぞ…」
「おいおい、連泊なんて聞いてないぞ」
「今、家にはあんまり居たくないんだ…」
「ああ、そうだったな。お前と夏侯惇先生は喧嘩しているんだっけな…」
張飛は思い出したように呟く。
「まだ仲直りできてないのか?」
「うん、でも今日は惇兄は飲み会に参加している筈だ…」
「雲長が言っていたな。俺も呼ばれたが妙才が泊まりに来るから断ったぜ…」
「ごめんな翼徳…」
「謝んなって、とりあえず行くか…」
「ああ…」
二人は止めていた車に乗り込むとシートベルトを絞めて張飛のマンションへと向かった。
車を運転していた張飛は夏侯淵の様子を気にはしていたが夏侯淵はただ外の風景を見ていた。
マンションに辿り着くと張飛はマンションの駐車場に車を止めた。
「着いたぞ…」
「ああ…」
二人は車から出るとマンションの入口へと歩いていった。
「あんまり部屋広くないから文句言うなよ…」
「ああ、そう言えば張飛のマンションに来るのは初めてだ」
「あんまり仕事場の連中には家に寄らせてないからな…」
張飛はドアの鍵を開けると夏侯淵を先に入らせると張飛はドアに鍵を掛けると部屋に入った。
「思っていた以上に広いな…それにあんまり荷物置いてないんだな」
張飛の部屋は必要最低限の荷物しか置いていなかった。
「俺はあんまりごちゃごちゃしたの嫌いだから必要最低限の物があれば充分だ…」
「うちとは大違いだな。俺ん所は沢山あるからな…でも張飛の寝室のベッドでかいな」
「キングサイズのベッドを利用している。これなら二人で寝ても余裕だぜ」
「まあ、張飛は俺よりもガタイがいいから納得するよ…」
「とりあえず、好きな所に荷物でも置いてゆっくり寛げよ、俺は何かつまみでも作るから」
「翼徳の作る手料理が大好きだから期待しちまうぜ」
「おいおい、あんまり期待するな有り合わせな物で作るんだから…」
張飛はそう言うとキッチンに向かい、冷蔵庫から必要な材料を取り出し調理を始めた。
暫く待っているとキッチンからいい匂うが鼻をくすぐる。
「いい匂いだな…」
「待たせたな妙才…、すまんな有り合わせな物で」
「いいよ、俺が急に泊まるって言い出したんだから文句は言わないよ」
張飛はテーブルにつまみが盛られた皿を置いた。
「旨そうだな」
「ほら、妙才の分の食器だ。好きなだけ食え、足りなかったらまた作るぜ…」
「ありがとう翼徳…」
張飛から皿や箸を受け取るとつまみが盛られた皿から料理を取り分けていく。
「ほら、ビール飲むんだろ?」
「おうっ!」
張飛はクスっと笑いながら夏侯淵にビール缶を渡した。
「いただきます…」
「いただきますって、熱いから気をつけて食えよ」
「ああ…」
夏侯淵は張飛が作ったつまみを口に運んだ。
「美味〜い」
「そうか、青椒肉絲は簡単だからな。今度、妙才も作り方を教えてやるから料理してみろよ…」
「俺、料理苦手なんだけど」
「知ってるぜ。妙才は料理が苦手なのは…だから俺が教えてやるよ」
「本当か、翼徳!?」
「ああ…」
夏侯淵は身を乗り出すように張飛に問い掛けた。
「翼徳が教えてくれるなら俺頑張るよ!」
「何でそんなに意気込んでいるんだ?」
「実は惇兄と喧嘩したのは知っているだろ…」
「ああ…」
「喧嘩の原因は俺が料理出来ないのが一番の理由なんだ」
「はっ?」
「だから、俺ん家ね…家事とか当番制でね。惇兄と一緒に暮らしてるだろ。惇兄は一人で何でもできるけど俺は家事だけは駄目なんだ…惇兄にマズイ料理を食べさせてしまったし、ボヤ騒ぎで火事になる一歩手前になった事をしたから」
「成る程な。だから家に居づらくなって俺の家に泊まりに来たのか…」
「ああ…」
「だから俺、翼徳に料理を習って惇兄を見返したいんだ!俺だってやれば出来るんだって所を知ってもらいたい」
夏侯淵は張飛の手を握り頼み込んだ。
必死な姿を見て張飛はクスッと笑う。
「俺は料理に関しては厳しいぜ…それでも教えて欲しいか?」
「ああ…」
「わかった…だが、今日は飲み交わそぜ。久しぶりに妙才と一緒に飲めるんだから」
「おう!」
二人は意気投合して酒を飲み交わしたのであった。



それから数時間が過ぎた。
「妙才、もう遅いから寝るぞ…」
「んあ〜、もっと飲もうぜ〜」
「何言っている俺よりベロンベロンに酔っているし、これ以上飲むな…」
張飛が夏侯淵をベッドへと連れていく。
「ほら、服脱いで寝ろ…雑魚寝よりマシだ」
「なら、翼徳が脱がしてよ」
「全く手間がかかるな…」
張飛は文句を言いながらも夏侯淵の服を脱がし下着姿にさせた。
張飛は夏侯淵をベッドに寝かせて自分はテーブルの上にあった食器を洗い片付けをすませた後、夏侯淵が眠るベッドに腰掛けた。
(全く、幸せそうな寝顔してやがる…)
張飛はそう思いながら夏侯淵を見た。
本当に世話がかかる年上の同僚なのに放って置けない。
それでも一緒にいて楽しいから好きだけど。
張飛は夏侯淵の額にキスを落とすと夏侯淵の隣で横になって眠りについた。
それから次の日になると二人は案の定、二日酔いに襲われた。
張飛よりも夏侯淵は気持ち悪いとベッドに伏せていた。
張飛も頭痛はするがそれ程酷くもなく痛み止めの薬を飲めば問題ないだろう。
「だから飲み過ぎだと言ったのに…」
「翼徳、水くれ〜」
「はいはい…」
張飛は夏侯淵に言われた通りにグラスに水を注ぎ夏侯淵に渡した。
「ほらよ…」
「ありがとう…ごめん、迷惑掛けて」
「その様子なら料理を教えるのはまた今度だな。お粥ぐらいは喰えるだろ?」
「ああ…」
「トッピングは何がいい?」
「何でもいい…」
「そうか、なら待ってろ…」
張飛はキッチンに向かうとお粥作りをする為に棚から土鍋を取り出した。
そして二人分のお粥を作ると夏侯淵の分を持って寝室へと向かう。
「とりあえず、好きなおかずを乗せて食べろ…」
「美味そう、これなら食べれる」
「そうか」
張飛が作ったお粥は玉子粥を基本に小鉢におかずが数品あった。
好きなおかずを粥に乗せて食べれる心配りだろう。
それだけでも嬉しかった。
「翼徳、やっぱり俺、翼徳が大好きだ。惚れ直しちまうよ…」
「俺も妙才が好きだぜ。馬鹿言ってないで早くたべろ…冷めるぞ」
「うん!」
夏侯淵はまるで子供っぽく笑いながらお粥に手をつけた。
張飛は夏侯淵が食べている姿を見ていて笑顔が思わず浮かんだ。
「あちっ!」
「慌てて食べるからだろ。ほら水…」
「ありがとう…」
夏侯淵は張飛からグラスを受け取ると水を飲み干した。
「熱いなら冷ましてから食べさせてやろうか?」
「なら、翼徳が食べさせてよ…」
「して欲しいんだ…」
張飛は呆れながらもレンゲでお粥を掬うと息を吹き掛けて熱を冷ましてから夏侯淵に食べさせた。
「これなら喰えるからもっと頂戴…」
「全く、でっかい子供だな…」
張飛は嫌がりはしないが溜息をついてまた同じように夏侯淵にお粥を食べさせた。
その嬉しそうな笑顔を見ていると自分が恥ずかしくなった。
まるでこれでは恋人か家族のような扱いになるのではと気づいた。
「なあ、翼徳…俺、本当に翼徳の事が好きになっちまったみたいなんだ」
「えっ、マジかよ…妙才」
「だって、こんなに迷惑掛けてるのに嫌がりもしないし。優しいし、頼りになるし…俺は翼徳が大好きになっちまった」
「おいおい、本気か妙才…?」
「迷惑か、やっぱり俺は嫌いなのか?」
夏侯淵は涙目で訴えてくる。
「嫌いじゃないぜ…」
「なら、俺が翼徳の恋人になっても良いだろ?付き合っている奴でもいるのか?」
「なっ、お前には関係ないだろ…そんな事」
「やっぱり駄目なのか?」
「わかった、わかったからそんな目で見るな!」
「じゃあ、俺が翼徳を好きでいても構わないよな?」
「ああ…好きでいるなら問題ないが」
(やべえ…肝心な事言えねえや)
肝心な事とは関羽と関係があるとは言い出せないであった。
「翼徳、大好きだよ…」
「はあ、お前には呆れるよ…」
夏侯淵は張飛に抱き着き顔を胸に擦り寄せ喜んでいる。
そんな姿を見ていたら断れない張飛であった。





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