大人の時間



※現代パロ


夏侯淵はそれを見るなり、カラダを強張らせた。
彼の視線の先には、悠然と微笑む愛しい夏侯惇の手がある。
そう、その夏侯惇の手には、俗に言う『大人の玩具』が握られていたのだ。
時間をかけてゆっくりと進む優しくて丁寧な夏侯惇の愛撫に翻弄され、すっかり蕩けた蕾はひくつき、指よりも熱くて確かなモノを懇願していた。

「惇兄…それ、使う…のか?」

冗談だよな、と夏侯淵の笑顔が引き攣る。
いつ、どこで、どんな顔でソレを購入したのかは知らないが、普段の禁欲的な姿とは裏腹に、夏侯惇は二人きりのときやたらと夏侯淵に悪戯をしたがる。
まさか、これを自分の中へ入れるんじゃないのか…と、夏侯淵は不安そうな視線でその玩具を見つめた。
色はピンク。
だが、お世辞にも可愛らしいとは言えない太さだ。
はっきりとは分からないが、夏侯惇のサイズぐらいあるに違いないと夏侯淵は赤面した。
というか、夏侯惇の笑みが恐ろしい。

「たまには、趣向を変えようか。飽きられたら、大変だからな」
「あき…飽きるなんて!…ま、マジでソレ使うのか!?」
「おや、嫌がる様子からしてもしかして経験済みか?こういう大人の玩具は?」
「経験…っていうか…惇兄と付き合う前に…付き合ってたヤツに……その、あの…」

もごもごと口ごもる夏侯淵の言葉に、夏侯惇は嫉妬の炎を燃え上がらせた。
瞳の奥が、熱い。
確かに、数年前、夏侯淵を自ら手放したのは自分だ。
だが…。
心の底から湧き上がる黒い感情に突き動かされるまま、夏侯惇は夏侯淵を身体の下に組み敷いた。
「んっ…や、だ…ちょ、…惇兄!いやだ…っ」

男根を模った玩具が、入り口に冷たく当たる。
無機質な感触に、夏侯淵は夏侯惇の首に縋りついた。

「ん、んんぅ…っ、い、た…痛い…」

夏侯淵の体液でしっとりと濡れていたそこは、大した苦痛も無く夏侯淵の内部に侵入したはずだ。
だが、夏侯淵は夏侯惇のモノとは違うという異質感に痛みに似たものを感じたようだ。
苦痛に眉を寄せるかんばせが、ゾッとするほど艶かしく美しい。
やがて根元付近まで入り込むと、夏侯淵の内壁は持ち主の意に逆らってそれをきゅうきゅうと締め付けた。
静止しているモノに、早く何らかの刺激を与えて欲しくて、夏侯淵は知らず知らず腰を揺り動かして夏侯惇を誘う。
夏侯惇の指が、そのスイッチに触れるまで…夏侯淵は懸命に夏侯惇に強請り続けた。
そんな夏侯淵の姿に、夏侯惇はふわりと優しく微笑むと、端正な指先でバイヴのスイッチを入れる。

「いやぁあっ…! あっ、と…惇兄っ!!ひゃあっ…ん、あぁっ…」

急に体内で暴れだしたモノに悲鳴を上げながらも、夏侯淵の内部はそれを待ち望んでいたかのように喰らいついた。
ぎゅうぎゅうに締め付け、確実にイイところを擦る玩具を逃すまいと腰に力が入ってしまう。
うねるモノに順応して、夏侯淵の内壁も揺れているような感覚だ。
夏侯惇のとは少し違う機械の愛撫は、夏侯淵に狂うような官能を味わわせてくれた。

「なっ…や、だァ…!!」

だが、自分のそんなはしたない姿が夏侯淵にとってはかなりのショックだったらしい。
夏侯惇に縋りついて、いや…と首を激しく振る。
今にも弾けそうになっている欲望を、夏侯淵は自分自身の手で強く握り締めていた。
夏侯惇の愛撫以外でイくことは、夏侯淵は許さないらしい。
そんな健気な姿も、また可愛いのだ。
夏侯惇は、夏侯淵の手の上に自分のそれを重ねて、ぎゅっと握りこむ。

「えっ? と…あっ、あぁ…ん…惇兄っ」

自分の手の上に重ねられた夏侯惇の手によって、夏侯淵の欲望が上下にやんわりと扱かれていく。
あっという間に近づいてきた限界に、夏侯淵が泣き声を上げた。

「惇兄…っ…」
「どうした、淵?」

頬や目元に口付けを落としながら、夏侯惇はセクシーなテノールの響きで夏侯淵に問いかけた。
夏侯淵の言わんとしていることを分かっていながら、意地悪に尋ねる。

「やだっ…わかってる、くせに…ぃ…ん、ぅっ…」

バイヴが与える官能的な刺激に、必死に耐えながら、夏侯淵は夏侯惇の耳元で甘く囁いた。

「惇兄じゃなきゃ…いやだ…!!」
「嬉しいことを言ってくれるな。俺だって、お前じゃないと、イヤだな」
「ちがっ…だか、ら…これ、抜いて…早、く…惇兄が…ほ、欲し…い」
「クス…、分かっている。でもな」

夏侯惇は飛び切り甘い声で、夏侯淵の聴覚を犯すように囁いた。

『今日は、コレだけでイッてみせてみろ』と。

そんなこと、できるわけないと夏侯淵は暴れ始めるが、夏侯惇は夏侯淵の手越しに下肢をギュッと握り締めることでそれを封じた。

「あ、ひゃぁ…ッ!!」

突然与えられた強い刺激に夏侯淵の首筋がキレイに仰け反った。
それにやんわりと噛み付きながら、夏侯惇は更に手の動きを早める。
バイヴでさえも、夏侯淵の限界の限界がすぐそこまで来ていることを知っているのか、些か動きがダイナミックになったような気さえした。
内部をかき回される壮絶な快楽と、夏侯惇の手に包まれて自慰行為をする羞恥が、夏侯淵の体温を上昇させていく。
やがて、目の前が白くなりはじめ、限界の線をスッと越えたその瞬間。

「はっ、はぁ、ん…っ、んぁ…やめッ…あ、もっ…!」

ビクン!と、一際夏侯淵の身体が大きく跳ね上がり、夏侯惇の手の中に温かいモノが溢れた。
ようやく夏侯淵を解放した夏侯惇は、汚れた己の手に舌を這わせながら、鬼畜に微笑む。

「さ、あとは本番を残すのみだな…」

夏侯淵は、引きつった微笑で恋人を見つめてた。
―――大人の夜はまだまだ、始まったばかりであった。





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