絡み合う歯車



※惇(自サイトの)×淵(宗市様の)企画小説です。


それは偶然と偶然が重なり、出会える筈のない二人がひょんな事から出逢ってしまった。
いつも見慣れた姿なのに何処か雰囲気が違う。
態度も仕種も見慣れた筈なのに何処かしら違って見える。
夏侯惇は目の前にいる夏侯淵をじっくりと見つめる。

「どうしたんだ惇兄?」
「お前、淵なのか?」
「はぁ?何言ってんだよ。惇兄、熱でもあるのか?」

夏侯惇の言葉に夏侯淵はすっとぼけた表情を浮かべた。

「いつもと違うような気がしてならないのだ?」
「そっかな。俺は惇兄が格好良くて素敵過ぎるんだけどな…」

夏侯淵は夏侯惇の顔を見つめながら顔を赤く染めて照れる。
こんな惚気る姿は初めてだ。
いつもは変態じみた考えを自分に晒さない夏侯惇の姿に夏侯淵は改めて惚れなおす。

「どうした、そんなに見つめて。俺の顔に何かついてるのか?」
「ううん、何でもないよ」

夏侯淵は首を左右に振り否定する。
本当にどうしちゃったんだ。
何かいつもと違うからドキドキが止まらない。
顔を見るのも恥ずかしくなってきた。

「淵、顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」
「ほえっ!?」

夏侯惇は夏侯淵の額に自分の額を宛てた。
突然の行為に更に夏侯淵は顔を赤く染め体温が上がるのを感じた。

(近い、近いって。惇兄の顔がすぐ側にある〜)
「ふむ、熱はないな…」

夏侯惇はゆっくりと顔を離した。
夏侯淵は突然の事をされてちょっと慌てていた。

「どうしたんだよ惇兄。何か変なものでも食べたのか?」
「どうしてそう思う?」
「だっていつもと違う…」
「いつもと違うって何だ?」

夏侯淵の言葉に夏侯惇は怪訝そうに眉間に皺が寄る。
夏侯淵は恥ずかしそうにもじもじする態度を取る。

「だっ、だっていつもだったら顔を近づけたりしたら変態じみたり、べったりするじゃないか」
「ああ、そんな事か?俺はお前が良く知る夏侯惇じゃないからな…安心しろ。俺はそんな事はせんからな」

夏侯惇は夏侯淵の身体を抱きしめる。
夏侯惇の言葉に夏侯淵は訳がわからない。

「それにどんな形であれ。妙才に触れられるのが幸せなんだ…」
「げ、元譲…」

夏侯惇は優しい笑顔を浮かべ夏侯淵の頬を軽く撫でた。
いつもと違う夏侯惇ではあるがこんなに素敵な表情を浮かべる従兄は初めてであった。
やはり別人なのか?
でも姿形は夏侯惇そのもの。
夏侯淵は疑問が未だに拭えない。

「解らないのなら教えてやる。俺は別次元(他サイト様)の夏侯惇だ。まさかこうして廻り会えるとは思わなかったが」
「べ、別次元(他サイト様)の惇兄!?だ、だからいつもと違うのか。何だか納得した」

いつもはべったりしてくるのにそれもしない。
変態じみた態度もとらない。
だからか。
でもやっぱりいつも接してくれる惇兄がいいよ。
夏侯淵は何だか寂しい表情を浮かべる。
その表情に気づいた夏侯惇はクスっと笑う。

「安心しろ、普段接している夏侯惇はうちの妙才を愛でる処かそれさえもできずに固まっているぞ」
「えっ!」

夏侯惇が指を指す方向を見るともう一人の自分と夏侯惇がいた。
もう一人の自分は固まった夏侯惇の鼻の部分に宛て紙をして鼻血を拭いている。

「あ、あれはいつも見ていた惇兄?それに側にいるのは俺なのか?」
「ああ、あれはうちの妙才が嫌な顔せずに鼻血を拭いているな…」

微妙な光景を二人は見ていた。

「同じ姿なのにみっともないな。うちの妙才を愛でれぬとは…」
「あー多分、いつも俺が惇兄の事を手荒くあしらっているから」
「成る程な。愛情の裏返しも良いが本当に愛してやらんとあいつが可哀相だぞ」
「だって恥ずかしいんだもん…」

夏侯惇の言葉に夏侯淵はもじもじしながら呟く。
そんな態度が可愛いと思いつつ、遇えて言葉に出さない。

「俺はこちらの妙才を愛でれて幸せだがな…」

夏侯惇は優しく抱きしめた。

「惇兄…っ」
「愛しているぞ妙才…」

夏侯惇が唇を寄せてくると夏侯淵は素直に唇に受け止めた。
触れてくる熱が心地好い。
ゆっくりと離れる夏侯惇に夏侯淵は熱っぽい表情を浮かべる。

「そろそろ、お前の処の夏侯惇の元に行ったらどうだ。やっと正気に戻ったようだしな…」

夏侯惇はそう呟くともう一人の夏侯淵の元へと向かう。

「貴様、うちの妙才に何しやがる。手を出したらただではすまされんぞ!」
「ふん。そう言う事を言うなら態度で示さないお前が悪い。少しは自分の態度を改めて接した方が妙才に良いのではないか?」
「うぐっ…」

夏侯惇はもう一人の夏侯惇に言われて反論出来ない。

「早く行ってやれ。お前の事を妙才は待っていてくれているぞ」
「くっ、借りを作ったとは思わんからな!」

夏侯惇は夏侯淵の元へと向かった。
そんな後ろ姿を見ながら夏侯惇は溜息をついた。

「惇兄…」
「何だ淵?」
「俺にも口づけしてくれる。もう一人の俺にはして俺にはしてくれないの?」
「ふふ、妙才の望むままに…」

夏侯惇は自分が愛でる従弟に優しく甘い口づけを落とした。

それからもう一方の夏侯従兄弟はたじたじしながら気まずい空気を作っていた。

「妙才…」
「惇兄、いつもごめん。俺恥ずかしくていつもあしらった態度をとって…で、でもな俺は惇兄の事が大好きだよ」
「妙才っ、俺もお前の事を愛しているぞっ!」

夏侯惇は夏侯淵に抱きついた。
荒々しく抱きしめられて鼻息が荒い。

「ちょ、惇兄、止めろっ!キモいから」
「ああ、これだ。やっぱり俺にはお前のつれない態度が良いんだ!」
「うげっ、まじかよ。この変態、馬鹿っ!」

こちらの夏侯従兄弟はいつもと変わらぬテンションと態度でイチャイチャする羽目になった。





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