貴方に会いたいよ



いつでも逢いたいと思うのは贅沢なのだろうか?

最近、会えない日が多くなった。

任務が忙しいのは判る。

文でもあれば少しは違っているだろう。

なのに文も届かない。

「俺は気長に待てないよ…」

一人寂しく愚痴る。

最後に会ったのは一ヶ月前だ。

そんなに忙しいのかな?

それとも嫌われたのかな?

不安が心に積もる。

「貴方はどうしているの?」

寂しさのあまり泣いてしまう。

涙は止まらない。

ずっと、想っているのに会えないのが辛い。

「逢いたいよ…、惇兄…」

愛しい人の名前を言っても答えが返るものではない。
夏侯惇の事を想っているのに大好きなのに。
「こんな所で何をしているのです…?」
声を掛けられて、手の甲で涙をぬぐって振り向いた。
「…張遼」
張遼が側にいた。
「泣いていたのですか。夏侯淵殿?」
張遼は夏侯淵が泣いていた事に気付いていた。
「…気にしないでくれ」
夏侯淵は、無理に笑みを創る。
「………」
張遼はそんな夏侯淵を、痛々しいと思った。
「夏侯淵殿…」
張遼は夏侯淵を抱き締めた。
「!」
「無理をしないで、泣きたい時は泣けばいい…」
「…張遼」
夏侯淵は抵抗する気配は見せなかった。
「聞いて欲しい、もう一ヶ月も惇兄に会っていないんだ」
「そういえば最近、姿を見てないですな。任務に就かれているんでしたな」
「ああ、文のひとつも届かないんだ」
「寂しさのあまり、泣いてたんですか?」
「ああ…」
「なら、私にきりかえないか?夏侯惇殿のように寂しい想いはさせない」
張遼の言葉に耳を疑う。
今、なんて?
「張遼?」
「夏侯淵殿…」
張遼が抱き締めた腕に力をこめる。
暖かい腕、広い胸に安心を覚える。
嬉しいけど、俺が好きなのは惇兄なのに否定できないのは何故?
「駄目か?」
「張遼の事は好きだけど、だけど…」
それ以上は言葉には出せなかった。
言えば張遼を傷付けてしまう。
言えないよ。
惇兄を裏切るみたいで。
「ごめんなさい」
これしか言えなかった。
「貴殿は優しいな」
「ごめんなさい、張遼。俺の為に貴方を傷付けたくない」
「夏侯惇殿は幸せ者だな…」
張遼は溜め息をはいた。
「優しい貴殿を寂しい思いをさせて許せぬぞ」
「張遼、言い過ぎだよ」
「これぐらい言っても罰はなかろう」
「そうだね…」
夏侯淵は、クスっと笑った。
「やっと笑ったな…」
「えっ?」
「貴殿には笑顔が似合う…」
そう言い張遼は口付けを落とす。
「!」
頬に柔らかい感触に驚く。
「これぐらい良かろう」
意地悪く笑う張遼に何も言えなかった。
「ありがとう張遼、元気づけてくれて…」
「何だ、気付いていたのか?」
「なんとなく、わかった」
「そうか…」
張遼は夏侯淵を離した。
「夏侯淵殿、またな…」
「ああ…」
張遼は立ち去った。
独りになっても、元気にして待ってないと仲間達に迷惑をかけてしまうから、もう泣かない。

惇兄、早く帰ってきて。

そしたらずっと、貴方を離さない。

愛の言葉を囁き続けるから。



終わり

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