セクハラ



誰よりも愛しい。
身近な存在に想いを寄せるのはいけない事なのであろうか。
しかもその想い人は従兄弟だとしたら周りはどう思うのであろう。
今日は執務の用件でもないのに曹操は夏侯淵の執務室に来ていた。
暇が出来ると、わざわざ来たのだ。
家人の止める声も聞かずに。
それは、職権乱用とも言うんだろう。
「なんだ、また来たんだ…」
夏侯淵は呆れていた。
「つれないな」
冷たい態度にも曹操はめげなかった。
「こちらに来た理由は何だ?」
優しい笑顔をしているのに言葉には、刺があった。
「お前に会いたかったから」
「いつも朝の会議でも会えるではないか。わざわざ屋敷まで来ないで下さいよ」
曹操を心配になり口調が説教くさくなる。
「儂は間近でお前に触れたかったから」
さらりと言う。
「そんなんで危険を侵してまで来たのか」
自分の為に来てくれた曹操に、嬉しかった。
だが、護衛の二人を付けずに単独で来る事が問題であった。
「こうやって触れ合うのも悪くはないだろう?」
曹操は夏侯淵を引き寄せ抱き締めた。
「……殿」
腰に腕を回される。
恥ずかしいのか、顔が赤くなっていた。
かわいいヤツだ。
曹操はもう片方の掌が腰よりも下に触れてきた。
「!!」
曹操は突然、夏侯淵の尻を撫で始めた。
「何をするんです!」
突然の行為に夏侯淵は嫌悪感に襲われる。
夏侯淵の制止の声も聞かない曹操。
今、夏侯淵はセクハラを受けていた。
曹操は夏侯淵の反応を見てニヤリと笑う。
面白いほど反応が返ってくる。
もっと触りたい。
そう思った。
「ええい、やめんか!!」
夏侯淵は曹操に斬り付ける。
「やば、やりすぎたか」
さすがに度が過ぎたらしい。
夏侯淵の刀を、白羽取りで受け流す。
「お、落ち着け妙才…」
「俺は充分に冷静だ!」
曹操は何とか距離をとろうとするが夏侯淵がそれを阻止する。
「一度、その曲がった性根を叩き直してやる」
「可愛い顔でドスを効かせた声で喋るな!」
未だに曹操は白羽取りしていた刀を横に流した瞬間、素早く距離をおいた。
「儂が悪かった、機嫌直せ」
「何度もセクハラする殿が悪い…」
ばっさりと切り捨てる。
「触れて何が悪い」
「懲りてないのか?」
夏侯淵は剣先を曹操に向ける。
「儂は妙才を愛しているから触れたいと思うのは当然だ」
曹操は開き直る。
そんな曹操に、夏侯淵は溜め息をついた。
「貴方は何を言っても無駄のようですね」
「それは、判っていたはずだ。儂は手に入れるまでしつこい事を」
「そうでしたね…」
なかば諦めじみたように頭を垂れる。
曹操が夏侯淵に近づいて口づけをする。
「!!」
それは一瞬だった。
唇はすぐに離れた。
「またな、妙才…」
曹操はご機嫌良い顔をして屋敷に帰っていった。
「なっ…!」
突然の行為に夏侯淵は顔を赤くしていた。
やっぱり自分は、曹操には甘いらしい。
止めろと言ってもまた此処に来るんだろうな。
触れた場所が熱い。
指で触れる。
でも嫌ではなかった。
俺も曹操が好きなんだな。
でも、セクハラは止めて欲しい。
決して叶うはずのない願いを思うのであった。





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