最初に捕われているのはどっち?
ささいな言葉で、今に至るのだが。
「惇兄…重いからどいてくれ」
「何でだ?」
夏侯淵の言葉を無視して夏侯惇は、夏侯淵を押し倒している。
「俺はこんな事を望んでないぜ」
「好きだから、もっと淵を知りたいんだ…」
夏侯惇は夏侯淵の肩に爪を立てる。
「痛いっ!」
こんなに触れていても側にいても、こんなにも距離があってわからないのが悔しい。
「お前が欲しいんだ淵…」
それは夏侯惇の本意なのか夏侯淵にはわからない。
「そんなに俺が好きなの?」
陽に透ける髪が眩しくて、その強い意志を含んだ瞳に惹かれる。
「…ああ」
はじけだす気持ちを抑える術はない。
「嬉しいけど、それだけか?」
俺以外の人間の匂いをさせているくせに。
罠を引くのは簡単じゃない。
欲しいのはこの手に全て欲しい。
「どうしたい?望みは何だ?」
夏侯惇が夏侯淵に問い返す。
「もう、誰のものにならないで。俺だけを見てくれよ…」
「お前の願いを叶えよう…」
夏侯惇は夏侯淵にゆっくりと口づける。
「大好きだよ、元譲…」
「ああ、俺もだ。妙才…」
やっと捕まえた。
ずっと一緒だよ、元譲…。
だが、本当に捕われているのはどっち…?
終
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