儚げな存在、伸ばされた腕



悲しい事は嫌い。
辛い事はもっと嫌いだ。
郭淮にとって夏侯淵は大切な人。
私を助けてくれた命の恩人。
だから貴方の苦しみを取り除きたい。
貴方が幸せになれるなら私はなんでもする。

「郭淮、身体の調子はどうだ?」
「ん、大丈夫です…」
「郭淮は身体が弱いからあまり無理するな」
「ありがとう夏侯淵将軍…」

貴方は優しいから私は貴方の重荷になっているように感じる。

「何か欲しい物があったら何でも言ってくれ」
「今は何もいらない。夏侯淵将軍がいてくれるなら何も欲しくない」
「そうか…」

夏侯淵は郭淮の頭を撫でた。
貴方が触れてくるだけで私は嬉しくなる。
気持ちが良くなるよ。

「将軍、大好きです」
「俺が好きなのか?」
「はい、将軍は私の事は好きですか?」

初めて聞いてみた。
夏侯淵は少し間を空けてから答えた。

「俺も、その、好きだ…」

恥ずかしいそうに顔を赤くしていた。

「将軍は私の物ですよね」
「俺は物かよ…」
「もちろん私は将軍の物だよ」
「俺は男だぞ…それでも俺が好きなのか?」
「性別なんて関係ない、だって将軍が男だろうと女だろうと私は貴方に惹かれた」
「郭淮…」
郭淮は夏侯淵を抱き締めた。

「私は貴方の重荷と苦しみから救いたいです」
「郭淮…、ありがとう」

儚い存在を見つけた時、俺は胸糞悪い連中から彼を助けた。
彼が自分の元に仕えた時、いろんな事を教えた。
彼は儚くていつ消えてしまいそうで守りたいと思った。
そして救いの手を差し延べてくれる程に強い心を持った。
それが嬉しかった。
本当は自分が救いを求めていた事を郭淮は感じたんだろう。

「ずっと俺の側にいてくれ…」
「ええ…将軍」

願ったものはただ一つ…。
貴方と一緒に在る事だから。
だからこの手を決して離さないよ。
お願い、離さないで…。
儚くて優しい夢にいつまでもいつまでも溺れていよう。
貴方が側で笑ってくれる事が私の幸せ。
とてもとても大切な人。

「愛してます将軍…」
「ああ…俺もだ」

夏侯淵は郭淮に抱き締められてその腕の中で静かに涙を零したのであった。





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