君を失う恐怖と温もりを



暖かな体温を感じながらゆっくりと目を覚ました。
気付いたら目の前には愛しい人が傍らに眠っている。
起き上がろうとするが身動きが取れない。
夏侯惇は夏侯淵の腰に腕を回して眠っている。
「まったく、俺は抱き枕ではないぞ」
夏侯淵は夏侯惇の腕を解いて起き上がる。
昨日の夏侯惇は様子がおかしかった。
荒い呼吸をして目は欲望の色を秘めていた。
夏侯惇に声をかけようとした瞬間、夏侯淵は夏侯惇に押し倒されていた。
『何をするんだ惇兄?』
夏侯淵は夏侯惇を引き剥がそうとする。
『欲しいんだ、淵…抵抗しないでく』
『一体どうしたんだ、いつもと様子が変だぞ?』
『そんな事どうでもいい…淵』
夏侯惇は夏侯淵に口づけをしていく。
触れてくる度に強制的な快楽を与えられる。
意思と反して身体は反応してしまう。
『ああ、やぁ…んあっ』
甘い声を上げると夏侯惇は嬉しそうに笑う。
『もっと俺を感じてくれ妙才…』
夏侯惇は高みへと導いていく。
腰の動きが早くなると夏侯淵は何も考えられなくなる。
『元譲…もう』
『一緒にイこう』
夏侯惇は夏侯淵の足を掴んで律動を早めていく。
『あああ…、いい、元譲…ああああっ』
『くっ…』
夏侯惇は夏侯淵の最奥にありったけの精を注ぎ込んだ。
繋がったままで荒い呼吸を繰り返す。
『元譲、何故こんな事をする』
夏侯淵の意思を無視して抱く行為は強姦と代わらない。
『ずっと飢えていた。妙才に触れていない日がずっと続いていたから』
『だからといってこんな行為をしなくても…』
『理性が耐え切れなかった。お前を見ていると色欲が強くなる』
『もしかしたら、発情期か?』
『馬鹿いうな、動物ではないのに発情期がくるかよ、でも妙才を見ているとな。俺も発情期なのかもな…』
夏侯惇は夏侯淵に軽く口づけをする。
『それよりも早く抜いてくれ』
そう、二人は未だに繋がったままであった。
『悪い…』
夏侯惇は名残惜しそうな表情を浮かべながら夏侯淵の中から自分の欲望を引き抜いた。
『んっ…』
夏侯淵は引き抜いた感覚に声を上げる。
『暫くは一緒に寝てくれないか?』
夏侯惇は夏侯淵の腰に腕を回して抱き付いた。
『どうしたんだ?』
『不安なんだ最近…』
夏侯淵は不安そうな表情を浮かべる夏侯惇を包み込むように抱きしめる。
『安心しろ…俺はずっと側にいるから』
『妙才、ずっと俺の側にいてくれ』
夏侯惇は安堵の溜め息をついて眠りについた。
夏侯淵は昨日の事を思い出した。
未だに腕の中で眠る夏侯惇を見つめる。
「悩み事があるなら、打ち明けて欲しいのに」
言わなければ分からない事もある。
夏侯淵にとっては大切な存在な夏侯惇に悩みがあるとこちらが辛く感じた。
こんな感じは今まで生きてきて初めてだ。
「ん…」
もぞもぞと夏侯惇が目を覚ました。
「淵、おはよう」
「おはよう惇兄…」
夏侯淵は恥ずかしいのか目を逸らす。
「昨日はすまなかった、何処か異常は無いか?」
「いや、異常は無いが…」
「そうか」
夏侯淵から一向に離れる気配が無い夏侯惇に夏侯淵は不審に思った。
「惇兄?」
「夢の中で淵が消えてしまって俺はずっと泣いていた」
夏侯惇は夏侯淵を抱き締めた。
「良かった側にいてくれていて夢で良かった」
「約束しただろ、俺は惇兄に黙って消えたりはしないと」
夏侯淵の優しい声が安らぎを与える。
「ああ…」
「俺は惇兄の手を放さないからな。ずっと側にいよう」
夏侯淵は夏侯惇に告げると口づけをする。
誓いを告げるかのように。
朝焼けの光に包まれて二人は永遠の誓いを立てた。
『ずっと一緒にいよう…』
これから起きる未来がどんなものでも二人なら乗り越えるであろう。
いつまでも共に生きていたいと願うのであった。





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