大人への階段



『コドモ』だった俺がいつか『大人』になってこんなにも夢中だった事が見えなくなってしまう?

ひとつひとつ階段をゆっくり踏み締めて今しかできない事が明日までも待てなくて。

いつまでも澄んでいた瞳を持ち続けたらどんなにいいか。

俺はずっとコドモでいたい。

大人の瞳は曇って見えるはずのものが見えなくなってしまうから。

背伸びをして貴方の隣りにいるよりも有りのままの姿でいたい。

貴方はそう言ってくれたから。

だから貴方の隣りにいて恥ずかしくないように努力した。

そして認めて欲しかった。

『俺は貴方の隣りにいていいですか?』

けれど自信が無くていつまでたっても言えない。

そんな俺は嫌いですか?

ずっと言いたくても言えなくて怖くなった。

俺は久しぶりにあった夏侯惇から逃げ出してしまった。

本当なら笑顔で迎えたかったのに。

今の自分は会う資格なんて無いよ。

どれくらい走ったのであろうか。

やっと止まった時に、背後から夏侯惇に抱き締められた。

「どうして逃げるんだ?」

夏侯惇の低い声が耳に届く。

「今の俺、惇兄に会う資格なんて無いよ」
「…どうしてそう思うんだい?」

夏侯惇は困った顔をする。

「だって、惇兄に会う度に変になるんだ。胸の辺りが熱くなってドキドキする」

夏侯淵は自分の変化を夏侯惇に伝える。

「本当に俺は惇兄の隣りに相応しいのかなって思ってしまうんだ…」

そんな夏侯淵に夏侯惇は微笑んだ。

「お前がそんな風に思ってくれる事を待っていたんだ」
「どうして?」

夏侯淵は振り向いて夏侯惇を見つめた。

「淵の事が好きだからだ…」

夏侯惇は夏侯淵に囁いた。

「この手を掴んだら、もう離さないからな。どうする?」

夏侯惇は夏侯淵に手を差し延べる。
夏侯淵は差し延べられた手を掴む。

「愛しているよ妙才…」

夏侯惇は夏侯淵を抱き締めた。

「元譲…」
「もう、無理してまで背伸びしなくても隣りで笑ってくれればいい…」

夏侯惇は夏侯淵の頭を撫でた。

「俺も元譲の事が…」

好きですと囁いたのであった。





prev next

 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -