部活の帰り、雨が降りすっかり暗くなった帰り道を歩いていると、前を歩いている人物の後ろ姿に見覚えがあった――瀬名さんだ。

「瀬名さん?」
声をかけてみたが振り返らない。
雨の音で聞こえなかったのだろうか。
もう一度少し大きめの声で名前を呼んでみると、振り返ったのはやはり瀬名さんだった。
どうやら音楽を聴いていたらしく、俺の姿を認めるとヘッドフォンを外してくれた。
「ごめん、もしかして何回か呼んでた?」
「いや、大丈夫だよ、もしよかったら一緒に帰ろうよ、送るし」
「一緒に帰るのはいいけど、送ってもらうのは申し訳ないよ、幸村くん部活で疲れてるでしょ」
「大丈夫だよ、それに暗いし雨降ってるし危ないだろ」


「瀬名さんは普段どんな音楽を聴くの?」
「普通に流行りの曲も聴くし、洋楽も聴くし、クラシックも好きだよ。いろんな人に勧められるままいろいろ聴いてるから、割と何でも聴くかなぁ。幸村くんは?」
「俺は今までクラシックをよく聴いてたんだけど、最近は後輩に勧められてスマイル動画の歌い手さんにハマっちゃって」
「へぇ、幸村くんでもスマイル動画なんて見るんだね。ちなみに誰が好きなの?」
「『ラピス』って知ってる?」

その時、瀬名さんの表情が一瞬固まった気がした。

「…よく知らないけど、有名な人なの?」
「最近人気急上昇中だって柳が言ってた。確かに、すごく良いよ。俺が今まで聴いた中で、彼女の歌声が一番好きだと思った」
「そうなんだ、今度機会があったら聴いてみるね。…あ、私の家ここだから、ありがとう幸村くん」
「どういたしまして」
「幸村くんも気を付けて帰ってね」
「ありがとう、じゃあまた明日学校で」


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