クールな彼の扱い方 (1/3)


「そろそろ寝ましょうか」
 初めての赤葦くんの家にお泊まり、二人で映画を観て、私が先にお風呂をいただいてその後に彼が入って、言われた言葉。
 彼氏の家に一晩泊まるのだから、私だってそれなりに覚悟はして来た。肌のお手入れも無駄毛の処理もバッチリ。心臓はドキドキして頭の中はぐるぐるしている。寝るってどっちの意味で?と間抜けなことを口に出しそうになり、あわてて飲み込む。飲み込んだ結果、出てきたのは、うん、という当たり障りのない返事だった。

「それでは、おやすみなさい」
 電気は消してもいいですか?明日は何時に起きますか?そんなことを確認されて、私を用意してくれていた布団に残したまま、赤葦くんは自分のベッドに行ってしまった。予想外の展開に、頭はついていかない。
 普通の恋人同士だったら、こういう場面では一緒に寝るのが一般的ではないのだろうか。例えそういうことをしなくとも、一緒の布団で、どちらかが眠くなるまでお話しして、抱き締め合って寝る、私はそういうものだと思っていた。間違っていたのだろうか。それとも、私とそういうことをしたくないという、赤葦くんなりの意思表示なんだろうか。すごく幸せだったはずなのに、途端に悲しくなった。

 そんな状態で眠れるわけもなく、無駄な時間ばかり過ぎていく。嫌な考えばかりが頭をよぎる。そういえば、私は赤葦くんに好きだと言われたことがないな、とか、やっぱり好きなのは私だけなんだろうか、とか。未だに埋められない距離を感じるのだ。それは、彼が後輩だからという理由ではなく。私に対して敬語なのも、名前で呼んでくれないのも、私のことを好きじゃないからなのかと、そんなことを勘繰ってしまう。もしかしたら、今日を楽しみにしていたのも私だけで、むしろ赤葦くんにとっては迷惑だったのかもしれない。涙が出そうになった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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