左様ならの末日 (1/2)


「さようなら」
 落葉を散らすどしゃ降りの雨の日、君はそう言い残して私の前から消えた。

 私の彼氏はいわゆる"いい人"ではなかった。悪い噂もよく聞いた。それでも、私は彼が好きだった。彼を理解したかったし、彼が抱えているであろう孤独に触れたかった。だから、私はしつこく彼に話しかけた。うっとうしがられても多少ひどいことを言われても諦めなかったけれど、雲を掴むようなものだなあとぼんやり思った。
 辛抱強く彼に話しかけ続けたある日、初めて彼が私を視界に入れてくれた。変な女、そう呟いて少し笑った。それだけで天に昇るくらい嬉しかった。
 それから、かなりアタックした。押して押して押しまくった。引かれても構うものか。頭の良い彼には私の足りない頭で立てた作戦なんて簡単に見破られてしまうだろうから、直球で勝負した。それが効を奏したのか、彼がめんどくさくなったのか、とにかく私は晴れて彼女になることができた。
 付き合い始めてからは、予想より遥かにいい彼氏だった。悪態や憎まれ口は変わらなかったけど、私を見つめる目や、私に触れる手は、かなり優しかったように思えた。大切にされていると幾度となく感じられた。だから、きっと彼も私を好きでいてくれたと思うのは、きっと自惚れではなかったはずだ。

 それなのに、どうして、いなくなっちゃったの――――花宮君。

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