両想い記念日 (1/3)


「付き合ってるはずなのに片想いみたい」
 放課後の教室。私は高尾に悩みを打ち明けていた。そう、これは恋愛相談。そんなカテゴリーに分類されるものだ。
「まだそんなこと言ってんの?」
 聞き手は私の発言に対して非常に困った顔をしていた。それもそうだろう。私達が付き合い始めるまでに高尾には非常にお世話になった。高尾がいたから今の私達がいると言っても過言ではない。なのに、私は恩を仇で返すようなことを言っている。そんなのわかってる。
 でも。
「だって好きって言われたことない」
「あの真ちゃんが好きじゃないやつと付き合うわけないだろ」
「そう、信じたいけどさ」

 私達の関係が始まったのは三ヵ月前。私から告白した。二人で出かけた帰りに直接言おうとして、でも言えなくて、そのままさよならしてしまった。そしてその後襲ってきた後悔。今日を逃したらきっと一生言えないだろうという予感。電車を降りた私はそのまま携帯電話で彼の番号をプッシュした。
 長い長いコール音の後、彼が出た。まず繋がったことにホッとした。次に電話越しに聞こえる彼の声にすらドキドキした、心臓が破裂しそうだった。さっき別れたばかりだからだろう、彼の声は怪訝そうな響きを含んでいた。
「あのね、伝え忘れたことがあって」
 口から何か(恐らく心臓)が飛び出そうで、なかなか上手く言葉が出てこない。たまに出てきたと思ったら、それで、とか、あの、とか、ほとんど意味を成さない繋ぎ言葉のみ。非常に長い時間、彼は辛抱強く待っていてくれた。何度かの深呼吸の後、私は言葉を紡ぐ。
「本当は、直接言おうと思ってたんだけど。今日、ずっと言おうと思ってたんだけど」
「ああ」
「結局言えなかったから、今、電話で伝えるね」
 ここで再び深呼吸。気持ちを落ち着けて、ついに伝える。
「私、緑間くんが好きです。……もし嫌じゃなければ、付き合ってくれたら、いいなー……なんて」
 付き合ってくださいだろ!何で最後の最後でヘタれる!と自分で自分にツッコむものの(もちろん心の中でだが)、一度出た言葉は取り消せない。
 そして、電話の向こうからは何やら熟考する気配が伺える。
 どうせ駄目元だ、フラれたって構うものか、と腹を括った。駄目だったら今まで通り、良い友達として、傍にいられればいい。
「……今までと特に変わらなくてもいいなら。俺にはバスケがあるし、勉強もせねばならないし、お前を一番に優先できるわけじゃない。それでもいいなら、こちらこそよろしくお願いするのだよ」
「もちろん!私も勉強や部活や趣味や、他の友達と遊ぶ予定だってあるから。だから、二人が余った時間を合わせて、今までみたいに遊びに行ったり会ったりしよう」
「ああ。……じゃあまた明日、学校で会おう」
 これが、私達の始まりだった。

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