クールな彼の扱い方 (3/3)


「で、どうしてほしいですか」
「どうしてほしいって……」
「逆にどうしたら嬉しいか言ってください」
 そこまで言わすかこの唐変木!と思ったけどそうだこいつは唐変木だったと思い直す。自分から言うしかない、もう一回腹括れ私。
「私だっていちおう女の子だから、ぎゅってされたら嬉しいなあなんて……」
 言い終わるか終わらないかの内に、腕を回されて抱き寄せられた。
 ていうか、耳元でよいしょって言うの反則だと思います……。

「赤葦くんって、私とこういうことしたくないと思ってた」
「俺、昔から枯れてるんで。自分からこういうことしたいとは思わないですけど、あなたがしてほしいと思うなら別に嫌ではないです」
「だって前にベタベタするの嫌って言ってたじゃない」
「別にこれくらいベタベタじゃないでしょ、人前でもないし」
「赤葦くん、未だに敬語だし、私のこと名前で呼んでくれないし」
「二人でいるときは努力します、慣れないんですよ」
「私も名前で呼んでもいい?」
「そっちだけ名字で呼ぶのも変でしょう、どうぞ」
「……私、ずっと不安だったんだけど、彼女として好かれてるって、自信持ってもいい……?」
「何言ってるんですか、杞憂ですよそんなの。もっと自信持ってください」
 そう言われて私を抱き締める腕に力を入れてくれる、たったそれだけのことがどれだけ嬉しかったか、きっと君には想像もできないでしょう。それでも、私は確かに幸せだった。

 抱き合ったまま他愛もない話をしたまま時間は過ぎて、白んできた空が朝の訪れを知らせる。鳥の囀りを聞きながら、これが朝チュンというやつか、と少しずれた感想を抱いた。

 こうして、私達は二人で初めて一緒に朝を迎えた。


150112 初出
150305 転載

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