クールな彼の扱い方 (2/3)


 どうせ眠れないし、身体を起こしてみた。暗闇の中で赤葦くんの方をうかがってみると、どうやら彼も起きているらしい気配がする。何を考えているんだろう。もし彼も眠れないなら、まだ眠くないなら、話しかけてみても許されるだろうか。
「ねえ、眠れない」
 思い切って、声をかけてみた。返事は返ってくるだろうか。
「ええっ……どうしましょうか」
「……」
「まだ起きててもいいですけど、起きてるなら何かしましょう」
「何かって?」
「何でもいいですよ」
 何でもいいって言われても、困る。だって、私が本当のことを言ったら、赤葦くん困るでしょう?
「本当に何でもいいんで、何か言ってください」
「……本当に、何でもいいの……?」
「はい」
「じゃあ、今からすっごい恥ずかしくて、キャラじゃないこと言ってもいい……?」
「はい」
 そこまで口に出したのに、続きが言えない。赤葦くんは何も言わずに待ってくれている。言いたい、言わなきゃ、でも言えない。恥ずかしいとか、嫌われたらどうしようとか、またひとしきり考えて、そして、赤葦くんを待たせていることに気付いた。
 どうせここには二人しかいないし、誰も聞いちゃいないんだ。腹括れ、私。

「私、赤葦くんとイチャイチャしたい」
 言えた!と思ったと同時に、言ってしまったという恥ずかしさが襲ってくる。
 言われた相手はというと、イチャイチャ……と呟いたきり固まってしまった。
「……イチャイチャって、具体的にどのくらいですか」
「どのくらいって……普通くらい……?」
「普通くらい、ですか……」
 何て間抜けな会話を交わしているんだろう。黒尾あたりが聞いたら卒倒しそうだ。

「じゃあ、とりあえず一緒の布団で寝ましょうか」
 失礼しますね、と言って赤葦くんがベッドから降りて布団に入ってきた。待って待って待って、展開早くない?

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