両想い記念日 (3/3)


 別れを切り出されるのかな、と覚悟したとき、
「どうして言ってくれなかったのだよ」
「へ!?」
 聞こえてきた予想とは違う言葉に、耳を疑った。
「そこまで不安だったなら、言って欲しかったのだよ。一人で悩まれる方がつらいのだよ」
「だって、迷惑じゃん」
「彼女から好きかどうか訊かれて、迷惑だと思う男なんていないのだよ。少なくとも、俺は思わないのだよ」
「……そう」
「俺はちゃんとお前のことが好きだから付き合っているのだよ」
「……うん」
 望んでた、一番聞きたかった言葉が聞こえて、思わず涙が流れた。嬉しくて嬉しくて止まらない。ああ、私、本当に緑間くんが大好きなんだ、って今更のように実感した。
 どこか痛いのかと心配そうに、ベタなボケをかましてくれる緑間くんがおかしくて、泣き笑いのような表情になってしまう。彼は私から少し目をそらし、ハンカチを取り出して渡してくれた。ありがたく受け取って、涙を拭いたらようやく少し落ち着いた。呼吸を落ち着けていたら、息が詰まった。一拍遅れて理解が追いついた。
 緑間くんに、抱き締められている。

「今までちゃんと言葉にできず、不安にさせて悪かった」
「ううん、私の方こそ疑うようなこと言ってごめん」
「俺は口下手だから、なかなかこういうことは言えないが、信じてほしいのだよ」

 後日、一連のやり取りにバッチリ聞き耳を立てていた高尾に両想い記念日だと冷やかされて真っ赤になりながら、そのあまりに適切なネーミングに思わず使用許可を求めたら、同じく真っ赤になった緑間くんにまとめてお説教されて。
 そんな些細なことにすら幸せを感じたのは、私だけの秘密だ。


141031 初出
150305 転載

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