お返しは、 (4/5)
「待たせたな」
気が付くともう練習は終わっていて、制服に着替えた跡部が立っていた。
「今日はもう暗いし車で送ることに文句はないな」
「うん」
「今日由起奈と帰るのを楽しみにしていた」
「…ありがとう」
ここで私もだよとかかわいく言えたらいいのに。
いつもの饒舌はどこへやら、跡部と一緒にいると緊張して口数が少なくなる。
「忍足からお前の耳当てが壊れたと聞いた」
忍足くんめ、絶対言うなと言ったのに!
やはり忍足くんに話したのは迂闊だった、と思ったが口には出さず心の中に留めておく。
「それで、昨日取り寄せた耳当てだ。お前が欲しいと言っていたデザインに近いものだし、ラビットファーがふんだんに使われているから暖かいと思う」
ラビットファーがふんだんに使われたものなんて安いわけないよね。
私はフェイクファーで充分なのに!
こうなるのがわかってたから忍足くんに黙っててって言ったのに!
しかし思ったことは全て口には出ない。
そして、跡部は沈黙を悪い方に受け取った。