お返しは、 (2/5)


跡部景吾と桐島由起奈はちょうど付き合い出して2ヵ月くらいである。
あの跡部に告白されたとき、由起奈は何の冗談かと思ったが、跡部の目があまりに真剣だったので、その真剣さに負けて付き合い始めた。

しかし、待っていたのは驚きの連続だった。

ある程度は予想していたが、それを遥かに上回る金銭感覚の違い。
何の気なしに欲しいと口に出したものはもちろん、人伝に聞いたであろうものも翌日にはプレゼントされる。しかも無駄に高級なものばかり。
おかげで由起奈は学校内で口にすることに最大限の注意を払うようになった。

そして、言わずと知れた黒くて長い高級車での毎日の送り迎え。
最初の方こそ新鮮で快適だと感じていたが、次第に何事かと注目する近所の目に耐えられなくなったのと、遠回りをさせることに申し訳なくなり、1週間ほどで辞退した。
跡部は不機嫌そうだったが、必死に説得して納得してもらった。

覚悟していた嫌がらせなどは跡部が最初に全校生徒に宣言していたのでほとんどなかった。
進んで跡部財閥を敵に回したい人間などこの学園にはいない。

こうして、由起奈の平穏な学園生活は保たれていた。
なぜ跡部が自分を好きになったのかは考えてみたが全くわからない。
改めて訊いてみるのも恥ずかしいし、跡部のような超人の考えることは自分のような凡人に理解できるはずもないということで自分を納得させている。

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