恋に落ちる音がした (2/2)
最寄駅を訊かれたので答えると、「あぁ、じゃあ俺と方向一緒っスね、送ります」と言ってくれたのだが、あまり申し訳なさすぎて一人で帰れる、そう言おうとした瞬間また身体がフラついた。
「そんなフラフラな身体で言われても説得力ないっスよ、心配なんで送らせてください」
結局そう言われてしまい、乗り換えの駅に着くと負担にならない程度に強引に引っ張られた。
乗り換えた電車ではしっかり席を確保してくれて私は座ることができたので、話ができる程度には回復できた。
「そういえば君、名前なんて言うんだっけ?」
「切原赤也っス、先輩は桐島由起奈先輩ですよね」
「えっ、何で私の名前知ってるの?」
「幸村部長から話聞いてたんで!」
「あっ、なるほど、切原君テニス部なんだ」
幸村君とは同じクラスで、結構仲がいい。
切原君を見たことがある気がしたのも彼がテニス部だったら納得である。
とりとめのない話をしているうちに最寄駅に着き、切原君は家まで送ってくれるそうで一緒に降りてくれた。
「先輩、だいぶ顔色よくなってきましたね」
「うん、気分もだいぶマシになった。切原君のおかげだよ」
「よかったっス」
「本当に迷惑かけっぱなしでごめんね…今度何かお礼させて?」
「そんないいっスよ、俺が好きでしたことなんで」
「それじゃ私の気が済まない」
「じゃああの…一つだけお願いがあるんスけどいいですか」
「いいよー、言ってみて」
「その…俺のことこれから名前で呼んでもらってもいいですか?」
「赤也…君、でいいのかな?」
ふと彼の顔を見ると真っ赤だったので、つられて私の顔も赤くなった。
恋に落ちる音がした
(俺、本当は先輩のことずっと見てました)120925 初稿
130212 転載