愛故に (4/5)


「やっぱり由起奈の料理はうまいぜよ」
「ふふ、ありがと」
好き嫌いの多い俺の好みを把握して、しかも寝起きでも食べやすいメニューにするという完璧さ。
作るメニューも限られるはずなのに、今のところ作りに来てくれた中で同じ料理が出てきたことはない。
本当、お嫁にもらいたい。

「将来料理人にでもなったらいいんじゃなか?」
「えー、無理だよ」
「いや、お世辞抜きでおいしいぜよ。そういえば料理好きじゃったか?」
「ううん、食べてくれる人の笑顔を見るのが好きなだけ」
「ますます料理人に向いていると思うがのぅ」

そこまで言って気付いた。
もしかして由起奈は俺以外の男(だけとは限らないが)の家にも料理を作りに行ったりするのだろうか。
ありえない話じゃないだろうけど、だとしたら俺はすごく嫌だと思った。
由起奈の料理を食べる男は俺だけでいい。

「ねぇ、雅治」
「何じゃ」
「私、好きじゃない人の家に料理作りに来るほど料理好きじゃないし暇じゃないんだよ」
そう言ってうつむいた由起奈の顔は赤かった。
にやけそうな顔を必死に律しながら俺は言った。

「なぁ、由起奈」
「…何?」
「お嫁に来てください」
「それ、いろいろ早いよ雅治」
でも、はい…ってはにかんで言った由起奈の笑顔がかわいすぎて、ついに俺の顔はだらしなく歪んだ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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