からあげに対する見解


「からあげ…?」

「そう、からあげだ!!!」


疑問符を浮かべたのは私、感嘆符を叫んだのは佐久間だ。
私は今何をしているのかと言うと、帝国学園の皆とお昼ご飯を食べている。
何故こうなってしまったのか…それは話すと少し長くなるのだけれど。

今日は気持ちのいい晴れた日曜日だ。雷門のみんなも練習をしているんだろうけど、私はここ最近顔を出していないが為に見かけてはいない。
そして昨日の昼頃、唐突に有人から電話がかかってきたのだ。内容は、帝国学園の練習に付き合ってほしい、ということだった。
敵である雷門中のマネージャー…と言っていいのかは分からないけど、そんな私に付き合ってほしいのはどういうことだ、と私は有人に問いかけた。
すると、帝国イレブンが買い弁ばかりでバランスのいい昼食をとっていないから、私に作ってほしいというのだ。
名門・帝国学園の癖に食生活はいい加減なんだな…と思いつつも、私は快くそれを了承した。有人に聞くと、大体は弁当持参でやっているそうだ。雷門とは大違いだな…なんて思う。
相当な量の材料を買い込んで徹夜で弁当を作り、それを帝国お抱えのバスで帝国学園まで運んだ。


そして今、昼食中にいたるわけで。
帝国イレブンはレギュラーメンバーしかいなかった。控え選手は別の施設で練習をしているらしい。
有人、佐久間、源田、大野、万丈、成神、五条、辺見、咲山、洞面、寺門……どれも相手チームとしてしか見たことの無い顔ばかりだ。
教養がいい帝国学園といえど、腹をすかせた練習後とあれば話は別だ。まるで小学生男子のように私が作った弁当をがつがつと食べている。


「からあげがどうしたのよ、佐久間…」

「いたいけな鶏をこんな揚げ物にするなんていかれてるだろ!!」


佐久間は顔を真っ赤にしながら私を怒鳴りつけているけど、呆れるしかない。
何だ、いたいけな鶏って……ちゃんと国産のいい鶏肉を買ってきたんだぞ、私は。ブロイラーじゃない高い鶏肉にいちゃもんをつけるんじゃない。
それに、みんな美味しそうにからあげを食べているというのに…全く訳がわからない。


「鶏は鳥類!!いわば、ペンギンの親戚のようなものだ!!その鶏をこんな酷い仕打ちにっ……!」

「おい、食事中だぞ佐久間、座れ。みょうじが困っているだろ」


源田がたしなめるように佐久間を制すると、佐久間は文句を言いつつも大人しくなった。
問題児は佐久間だけじゃない。右を見れば成神が洞面の卵焼きを盗み食いしてケンカ状態だし、左を見れば咲山と万丈が無言で睨み合いながら一つのハンバーグを奪い合っている。
そんな中で怪しい雰囲気を醸し出しながらミニトマトを食べる五条に、静かに麦茶を飲んでいる大野と寺門。そして、成神とのたこさんウインナー争奪戦に負け落ち込んでいる辺見。
何だここ…本当にあの帝国学園なの?これって夢じゃないの?
ためしに自分の頬をつねってみたけれど、頬がチリリと痛むだけで目の前の惨状は変わらなかった。


「……何か平和だね、帝国学園って」

「まぁ…中学生だからな」


有人は爺臭い言い方をしながらほうれん草のおひたしを口に運んだ。
な、何か有人にほうれん草のおひたしって似合わない…むしろ、ギャグにしか見えない……!
思わず吹き出しそうになった私に、有人は「どうかしたのか?」と首を傾げた。
私は笑いを堪えながら首を横に振る。


「でも、なまえさんが作ってくれたお弁当、とっても美味しいです!!」

「本当だな、心がこもっている味だ」

「ありがとう、頑張って作った甲斐があるよ」


洞面と寺門の言葉に思わず顔がほころんだ。
自慢じゃないが、料理は得意な方だ。夏未と比べたら月とすっぽん…おっと、これ、本人には絶対言えないな。
でも、褒められるのなんて久しぶりだから嬉しい。


「からあげ…最後の一個……!」

「俺が食う!!」

「駄目だ!ここは公平にじゃんけんを……」


褒められた嬉しさを感じている間に、どうやら弁当の中にはからあげが一個だけ残ったらしい。
咲山と大野が火花を散らす中、源田が解決策を出した。
源田は帝国学園のお母さん的存在なのかな…さっきから何かと平和的な方向に話を進めようとしている。
そのとき、意外な人物が声を上げた。


「いや、俺が食う。キャプテンの俺が食うべきだ。そうだろう?なまえ」

「そんなこと私に聞かれても…って、有人が!?」


有人がいかにも偉そうな顔で私に言ったから、思わず驚いてしまった。
それは帝国イレブンも同じなようで、皆きょとんとして目を丸くしている。
そんな中、有人は「頂くぞ」とあっけないまでにからあげを食べてしまった。数秒してから皆我に返ったように、有人を羨ましげに見た。


「ず、ずるいぞ鬼道!」

「そうっすよキャプテン!勝手に食べるなんて!」

「ふん、こういうのは早い者勝ちだ」


しかめっ面の辺見と成神をよそに、有人は得意げに笑っている。
平和だなぁ…帝国学園。何でこんなに仲良さげなんだろう。まるで大家族みたいだ。
なんて考えていると、横に置いてあったフルーツが入ったタッパーを万丈が見つけたようで、また騒がしくなる。


「よーし、次はデザートだ!!」

「苺いただきっ!」

「俺はオレンジー!!」



…拝啓、雷門中の皆様。
帝国は雷門よりも賑やかかもしれません。




からあげに対する見解


(余った苺は私が食べました)



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息抜きに書きました、10000HITアンケより嫌われ夢番外編です。

このお話は帝国学園でギャグ…というか、ほのぼのしてますね。
佐久間はもう、本当にどうしようもない子になってしまいました、すみません…
皆でわいわいしているお話が書きたかったのでこうなりました。

本編は暗めなのですが、たまにはこんなお話がほしいな…と思いつつも挟む隙間が無いので書けてよかったです。
なまえちゃんも珍しく感情をあらわにしていた、というかツッコミ役に徹していましたね(笑)

次に10000HITで書く時はエイリア編への序章的なお話か、雷門の誰かとイチャイチャしてるお話のどちらかが書きたいですね。


果実



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