真尋がきてから数日。 サッカーに興味を持っていた真尋はサッカー部の仮マネージャーとなり、私たちの仲は一層深まった。 とにかく真尋はすごい。勉強は出来るしスポーツだってお手の物。誰にだって優しくて、何より可愛い。少女マンガから出てきたんじゃないの? 唯一の欠点は…貧乳なことぐらいだと思う。まぁ、それも含めて可愛いんだけど。 そんな真尋だ。男子女子を問わず大人気だ。 男子からだけじゃなく、何故か女子からも告白されている…その度に「え?何処に付きあえばいいの?」と不思議そうな顔をしてて可愛い。 真尋の貞操は守らねば、と不純なことを考えながら私は教室へと入った。 「おっはよー」 教室にはもうクラスメイトがいる。まぁ、私が来るのが遅かったんだけど… しかし、教室内の空気がいつもと違う。重々しくてにごっているような、息苦しい空気だ。 いつもならみんな朝から友達同士でぺちゃくちゃと喋っているのに…どうしたんだろう? その異様な雰囲気の中、クラスメイトの視線が全員私に向いた。 「…おい、苗字」 「ん?何?」 一人の男子がこちらに向かって歩いてくる。 一体なんだと言うんだ。私はこういう空気が苦手なんだから…さっさとやめてほしい。 と、思った次の瞬間。頬に鋭い痛みが走って、私は床に張り倒された。 私は驚きのあまり声も出せなかった。痛っ…! 「っ!?」 「お前、時屋さんに何したんだよ」 「は?何言って…」 私の言葉は続かなかった。 何故かって?女子に腹を蹴られて声を飲み込んだからだ。 内臓が押し潰されるような感覚とともに息苦しさに襲われる。 キッとクラスメイトを睨みつけると、そこにあったのは冷ややかな視線、視線、視線。 背筋にゾクリと寒気がした。 「惚けないでくれない?時屋さんのこと、殴ったんでしょ?」 「え、ちょ、何言ってるのかさっぱり分かんないんだけど……」 「時屋さんが言ってるんだよ。お前に殴られたってな」 教室の奥には、クラスメイトたちに守られるようにして真尋が縮こまっている。 ぽろぽろと涙を流している真尋の頬には青い痣。肌が白いだけにすごく目立つ。 まさか…これを私がやったとでも言うの? 「わ、私…名前に酷いことしたかな…?したのなら謝るから…っ!」 「ま、真尋…?何言ってるの?私、何もしてないでしょ?」 「ふざけんな!時屋さんはお前に殴られたって言ってるんだよ!!」 嘘…どうして真尋がそんなことを。意味が分からない。 頭が混乱してぐちゃぐちゃしてきた。殴られた頬が、蹴られた腹がずきずきと痛んで、私の視界を涙が歪めた。 その時聞こえた声に私は絶望することになる。 「…最低だよ、お前」 声の主は…守だった。 こんなに怖い守を見たのは初めてだ。何もかもに絶望したような感情の無い目で私を見ている。 いつもサッカーをしている時は絶対にこんな顔をしないのに。思わず身がすくんだ。 声が震えて、上手く喋れなくなる。 「ま、まも…」 「名前がそんなことをする奴だとは思わなかった」 「ねぇ、私を信じてよ!!私は真尋を殴ったりしてない!!」 「信じられないな」 「っ…!しゅ、修也……修也は信じてくれるよね…?」 守の横にいた修也に引きつった笑いを向ける。 でも、修也の表情も守と同じ。私を拒絶して、妬んで、蔑んでいるんだ。 瞳の奥には怒りすら垣間見える。漆黒の炎が燃えるように。 嗚呼、これは本気で憎悪している目なんだ… 「…お前には失望したよ、名前」 「そ、んな……」 修也も私を信じてくれない。ここに私を信じてくれる人はいないんだ。 私は真尋を信じているのに…どうして?私は真尋に嫌われているの? 整理の出来ない頭の中には疑問しか浮かばなかった。 その時、クラスメイトの一人が口を開いた。 「苗字、俺たちはお前を許さないからな…?覚悟しておけよ」 全てが崩れ去る音がした。 一転した世界 (何よりも心が痛い) ----------------------------------- ついに嫌われっぽくなりましたが…急展開で申し訳ないです。 あくまでもメインは二期にする予定なので、このあたりはサクサクといきたいですね。 真尋ちゃんは悪女です、簡潔に言えば。 「キャラクターを独り占めしたい!」という嫌われ夢によくありがちなパターンのぶりっ子悪女ではありませんが… 私ですら分からないくらいに謎の深い子になっています(笑) 正体とか目的とかはお話の中で明かされますので! 果実 |