キーンコーンカーンコーン。 無機質なお決まりのチャイムが響き渡るが、誰も席に座ろうとしない。 その理由は簡単で、どの学校でもあると思う。 「聞いた?今日、転校生が来るんだって!」 「マジで!?女?男?」 「あー、美少女こい!美少女!」 「神様〜っ、イケメンを私に〜!!」 そう、私たちのクラスに転校生が来るらしいのだ。 朝から教室内はその話題で持ちっきり。男なのか女なのか、何処から来たのか、どんな性格なのか、それを予想したり願ったりしてみんな騒いでいる。 守や一郎太も楽しそうに転校生のことを話していた。 転校生か…楽しみだなぁ、何て少しだけ心躍らせてみる。 「おい、お前ら!席に着け!!」 案の定、教室の扉が開いて担任が入ってきて怒鳴った。当然だよね。 クラスメイトたちは慌てて自分の席について静まり返った。 みんな、ごくりとつばを飲む。 「分かってると思うが、今日このクラスに転校生が来る…入ってきなさい」 ゆっくりと教室に入ってきたのは…女の子だった。 赤みがかったふわふわの茶髪は肩まであり、彼女が歩くたびに揺れている。 病的とも言えるほどの白い肌と整った鼻梁、ぷっくりとした桃色の唇。 そして何よりも特徴的な暗緑の瞳は仄かに光を帯びているようで、吸い込まれてしまいそうになる。 一言で言えば「とてつもなく美人」。 転校生は細くて綺麗な手でチョークを持つと、黒板に名前を書き始めた。 「時屋真尋です。よろしくお願いします」 鈴を転がしたような澄んだ声。すごく可愛くて綺麗。 時屋さんがにこりと微笑む。昔見た天使の絵も確かこんな風に笑っていたな… 彼女の全てに誰もが見惚れているようだった。私も含めて。 「みんな仲良くしてやってくれよ。席は…ちょうど苗字の隣が空いてるな。苗字、手を上げろ」 「あ、はい」 一番後ろの席の私の隣には誰も座っていないからだろう。 まぁ、当然かな…転校生の隣だなんてある意味幸いだしね。 私が手を上げると、時屋さんは一番後ろまで来て私の隣に座った。 うわ、近くで見るともっと美人さんに見える。 「よろしくね、時屋さん」 「真尋でいいよ…苗字さん」 「私も名前で呼んでくれていいよ。名前って呼んで」 社交辞令のような挨拶だけど、とりあえず仲良くなれそうだね。 それに、何と言ってもすごく品がいい。お嬢様なのかな? 夏未には悪いけど、夏未みたいに気取ってない…こんなこと言ったら夏未に殺されるけど。 「休み時間に時屋を質問攻めにしないように。あとで時屋のプロフィールを書いたプリントを配るからな。それを見て分からないことだけ質問しろ」 おお、先生頭いい!それなら、真尋も困らないもんね。 クラスメイトたちは「はい」と返事をしつつ、真尋を好奇の目で見ている。 まぁ、一部の男子の目線がいやらしいんだけど…お前らあとで潰すぞ、こら。 そんなことを考えていると、転校生がきたと言う余韻を持ちつつ、一時間目の数学の授業が始まった。 「俺、円堂守!よろしくなっ!」 「うん、よろしくね…円堂君」 放課後になって、私と真尋はサッカー部の部室に向かっていた。 何と、真尋もサッカーが好きでサッカー部を見学したいと言うのだ。 その時に守や一郎太に引き止められて今に至る。 「でも、意外だな、名前と時屋が仲良くなるなんて」 「それはどういう意味だ修也。私にはお淑やかな真尋は釣りあわないとでも?」 「確かにそんな感じだけどな…」 修也と修也に同意した一郎太に殴りかかる。 …が、しかし、守に腕を押さえられて殴れない。離せ、守!! 私はじたばたと手足をばたつかせるが、その手は修也たちに届かない。 そんな私たちを見て真尋はクスリと笑った。 「名前と円堂君たち、仲がいいんだね」 「嗚呼、名前も豪炎寺も風丸も大切な仲間だからなっ!」 「ふふ、そういうの素敵だよね」 真尋の笑顔のお陰で私の怒りは何処かに吹き飛んだ。 可愛いなぁ、もう…!なんて癒されるんだろう。 それは他の面々にも効いたようで、みんなほんのりと頬が赤い。 おい、修也が赤面するとか気持ち悪いぞ。 「おーい、円堂ー!早くこいよー!」 いいところで邪魔をしたのは真一だった…この半端が!空気を読め! 校庭から私たちがいる3階に向かって手を振っている。 でも、時間も結構経ってしまっている。待ちかねたところで真一が呼びにきたのかな。 とりあえず、行かないとね…一秒でも惜しい。 「今行くー!急がないとな!!」 「んじゃ、行こうか…ほら、真尋も!」 「うんっ」 私たち五人は部室に向かって廊下を走り出した。 理科の先生が「廊下は走らない!」叫んでたけどそんなのは無視。 と言うか、守の耳には入っていない気もするけど。 まぁ…気にしたら負けだよね! こんにちは転校生さん (でも、その微笑が少し怖いのは何でかな) ------------------------------------- と言うことで、2話です。 定番の転校生ちゃんですよ。 時屋(ときや) 真尋(まひろ)ちゃんです。 美人で大人しいのは鉄則ですよね、この子が大きく物語を動かしてくれる…筈です。 2話から暗くなると書いたのですが、3話からになってしまいましたね;; でも、次からは嫌われらしい話になりますので! 果実 |