「こっちだ、風丸!」 「よし!行け、豪炎寺!」 「ファイア…トルネード!!!」 ただいま、午後4時。 雷門中のグラウンドではサッカー部が練習をしている。 私や秋、夏未に春奈ちゃんはそんなみんなの様子を眺めながらドリンクの準備をしていた。 全国中学生サッカーの祭典、フットボールフロンティアの頂点を目指すサッカー部は、尾刈斗中、野生中、御影専農中を破り、次の秋葉名戸学園との試合の為に練習を重ねている。 秋葉名戸に勝てば次はいよいよ地区予選決勝、帝国学園との試合だ。 守を先頭に修也や一郎太、一年生までもが燃えに燃えていた。 「みんなーっ、そろそろ休憩の時間よー!」 秋の声を合図にみんながベンチに戻ってくる。 私たちは一人一人にタオルやドリンクを手渡していく。みんな疲れてはいるけど達成感に満ちた顔でそれらを受け取った。 誰も怪我とかはしてないみたいだし、何より何より。 「やっぱり、豪炎寺のファイアトルネードはすごいよな!」 「円堂のゴッドハンドも日に日にパワーアップしているじゃないか」 「二人とも力が有り余ってるんじゃないの?」 守と修也の会話に私はクスクスと笑って言った。 二人だけじゃない、どの選手も着実に実力をつけてきている。 これが部員数も足りなくて弱小だったあのサッカー部なの?と、私自身もたまに疑ってしまうほどだ。 全国の強豪と同じステップに立っているのだと改めて実感できる。 「だからと言って、あまり無理はしすぎないで下さいよ?怪我でもしたら一大事ですからね!」 「ああ、一度だって試合には負けられないからな!」 春奈ちゃんが言うと竜吾は決意を表すように笑い、こぶしを握り締めた。 おおっ、竜吾…気合入ってるなぁ。男の中の男って感じで、少し熱苦しいけどかっこいいと思う。 何と言うか…竜吾兄貴って感じ?頼れる兄貴だ、うん。 「試合するのが楽しみでヤンス!」 「早く試合の日にならないッスかね〜」 栗松も壁山も心躍らせているようだ。 マネージャーである私もワクワクしてるし、それはみんな同じだと思う。 これならフットボールフロンティアにも優勝できるんじゃないか、と言う傲慢な考えが浮かぶ。 いけない、いけない。大きすぎる期待はかえってプレッシャーになっちゃうよね。 「それじゃあ、明日も放課後は練習ね…理事長に許可は取っておくわ」 「さすが夏未っ、理事長の娘ってすごいなぁ!」 「…名前、褒めても何もでないわよ?」 「なぁんだ、出ないのか…」 私が夏未を褒めると、彼女はじとりとした目で睨んできた。 もう、釣れないんだから…美味しいケーキの一つや二つ、奢ってくれてもいいのに。 私たちのやり取りにみんなが笑う。「わ、笑わないで!」と夏未は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。ツンデレ?ツンデレなの? 「まるで漫才だな…」 「五月蝿い一郎太。その髪の毛引っこ抜くぞ?」 今度は私が一郎太を睨む。 男の癖に長髪にしてややこしいんだよ。いっそのこと、バリカンで丸刈りにしたい。 その視線に悪寒を感じたのか、一郎太の顔が青ざめる。ざまぁみろ。 「とりあえず…次の秋葉名戸戦までにもっと強くなるために特訓だ!」 「おーっ!」 キャプテンってすごい。どんな話の最中でもみんなをまとめ上げちゃうんだもん。 これだから守にみんなついて行くんだけどね。熱血なサッカー馬鹿? 彼の“強さ”に惹かれて私もマネージャーになったわけだし。 人一倍情の深い守のキラキラした目が私は好きだ。 選手たちは古びた部室へと歩いていく。 今日の部活はこれで終わり、道具とか片付けないとね… ドリンクの容器やタオル、救急箱を手にしてマネージャー4人で運ぶ…と言っても、夏未は何も運ばないのだけれど。 青春真っ盛りな私たちを、真っ赤な夕日が照らしている。すごく綺麗。 こんなひと時がいつまでも続かないことを、私たちは知らなかった。 他愛も無い日常 (悪夢までもう少し) ----------------------------------- 日常からスタートした嫌われ夢ですが…本題に入ってないのに長いですね。 私の文才の無さのせいです、すいません。 名前ちゃん冷静設定は何処へいったのやら。 何だかドライな子になってしまいました← 呼び方についてですが、基本的に相手を名前で呼びます。 まぁ、栗松とか壁山は別ですが…名前で呼ぶの嫌だったので; これから一気に暗くなると思います。 とてつもなく長くなるような気もしますが、よければご一読ください。 果実 |