思い出



物心ついた時から、私には両親が一緒にいなかった。
私を捨てたのか、それとも死んでしまったのか、はたまた他の理由があるのか…詳しいことは何もわからない。
両親の代わりに私と一緒にいたのは、お日さま園という孤児院の子供たち。年は皆同じくらいで、同じように親がいなかった。
故に、私たちはお互いの気持ちを分かり合えたし、何より年齢の近い「家族」がいるのは嬉しいことだった。

そして、お日さま園という居場所を作ってくれた父さんと娘の瞳子姉さん。
父さんと姉さんは本当の家族のように私たちを扱ってくれた。息子を亡くした父さんにとっては、私たちが子供代わりだったんだろう。
親代わりと子供代わり、今考えてみれば何とも滑稽だ。

そんな父さんに特に気に入られていたのは『基山』ヒロトだった。
彼は父さんの死んだ息子の『吉良』ヒロトに生き写しで、いつも少しだけ特別扱いされていたような気がする。
父さんに気に入られるヒロトを妬んでいる子たちも中にはいたけれど、ヒロトだって好んで似たわけじゃない。大概の子供たちは彼を受け入れていた。

その後私は本当の母さんの母、つまり母方の祖母に引き取られた。
祖母は両親に関することは何も教えてくれなかったけれど、私を探し出してくれたらしい。
名残惜しくはあったけれど、お日さま園の皆とはそこで別れを告げた。
あれから数年が経って私は一人暮らしを始めた。それが雷門中入学時のことだ。
そして今日、久々にお日さま園の『家族』であるヒロトと再会した。



「ヒロト…?本当にヒロトなの…?」

「ああ、正真正銘本物の基山ヒロトだよ」


両手を広げてにっこりと笑うヒロトは、私が記憶しているヒロトとは大分違っていた。
丸かった瞳は切れ長になっていて、背も随分と伸びていた。声は低く青年になっていっているのだということが良く分かる。
それでも、あの頃の面影は残っている。間違いなく基山ヒロトだ。


「っ……!」

「名前……」

「…本当、久しぶり」

「うん、久しぶりだね名前」


嬉しさのあまり思わずヒロトの胸に飛び込んでしまった。
私を優しく抱きとめてくれるヒロトの胸は大きくて、何故かほっとしてしまう。
そのまま泣きそうになったけれど、それは恥ずかしいからぐっと涙を堪える。涙の再会なんて性に合わない。
暫くの間そうした後、私はゆっくりと彼の腕の中から出て一番訊きたかったことを尋ねた。


「……貴方は真尋、なの?」

「うん、時屋真尋の正体は俺」


そう言いながらヒロトは懐からなにやら紫色の石を取り出した。
500円玉ほどの大きさのそれは怪しい紫の燐光を放っている。パワーストーンか何かだろうか。
その光がヒロトに当たると彼の姿がぼやけていく…そして現れたのは真尋だった。
どういうこと…?手品、にしては大げさすぎる。


「これはエイリア石って言ってね。人間の力を何倍にも増幅させる石なんだ。この石を利用したらこの通り、姿や声を変えられたんだよ」

「エイリア…石……?」

「俺が時屋真尋として名前に近づいたのには訳があるんだ。君を陥れて孤立させようとしたのもね。名前、お日さま園に帰ってきてくれないか」

「お日さま園に…?私が?」


ヒロトは何を言っているのだろう…真尋として私を孤立させようとした?
彼の真意が分からず首を傾げていると、ヒロトは鉄塔の傍へと歩いていき何かを持ってきた。
彼の手の中にあった物は…あの宇宙人たちが持っていた黒いサッカーボール……!?
ぎょっとして私が後ずさると、ヒロトは笑いながらボールを地面に置いた。


「そう、これはエイリア学園のサッカーボール。そして俺を含めたお日さま園の子供たち全員がエイリア学園なんだよ」

「は……?」

「エイリア学園は宇宙人なんかじゃない。ただの人間だ。未知の隕石、エイリア石を使って父さんの目的を果たす為に作られたんだ。5つのサッカーチームで構成されている」

「ちょ、ちょっと待って!」


エイリア学園は人間で、しかもお日さま園の子供たちで、エイリア石を使って父さんの目的を果たす…!?
頭がフルスピードで回転しているのに処理が追いつかない。
どうしてヒロトは平然とこんな突拍子も無いことを言っているのだろう。訳がわからない…!


「雷門中を破壊したのはレーゼ…緑川リュウジが率いるジェミニストームっていうチームだよ。ちなみに俺はガイアっていうチームのキャプテンなんだ」

「け、けど…それと私との間に何の関係があるのよ!?」

「名前にはお日さま園に帰ってきて、エイリア学園の一員になってもらいたいんだ」


ああ、神様…これが夢なら今すぐ目覚めさせてください。



思い出

(もう、意味が分からない)


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ということで16話でした。
いつものごとく更新が遅くてすみません…
これからの更新ペースはずっとこんな感じになってしまうと思うのでご了承くださいませ。

今回のお話は名前ちゃんとヒロトのみの登場でした。
「思い出」とうサブタイトルにも関わらず思い出要素0ですね…
いつか回想シーン混ぜたいです、ほのぼのした感じで。

選択を迫られる名前。仲間を取るか、家族を取るか…
次回!星空トライゾン17話!
「名前、決断の時(仮)」!!
お楽しみに!

次回予告風でお送りいたしました。
更新は遅くなると思いますが、よろしくお願いします。


果実



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