影山が鬼瓦刑事に連行された後、帝国学園と雷門中の試合は再開された。 影山という鎖から解き放たれた帝国学園の動きは、40年間無敗だという事を鮮明に映し出した。 それに対抗する雷門中イレブンのみんなも、当初の実力を考えたら比べ物にならないほどに成長している。 まさか、弱小で廃部寸前のサッカー部がこの全国大会地区予選決勝の舞台に立つとは、誰も思っていなかっただろう。 結果は2対1で雷門の勝利、無敗の帝国をついに破ったのだ。 ちなみに、前年度のFFで優勝している帝国学園は無条件で決勝大会に出場できる…らしい。 そして、何より驚いたのが春奈ちゃんと有人との関係。 春奈ちゃんが「お兄ちゃん」なんて呼ぶものだから、とびきり驚いてしまった。 あとから聞いた話によると、別々の里親に引き取られた実の兄妹だとか… 正直、全然似ていないと思う。ドレッドゴーグルマントの妹がこんなに可愛いわけがない。 でも、有人の足にアイシングをしてあげている春奈ちゃんの姿は、相手を思っているからこそ出来るものだと思った。 そして日は少し経ち、雷門イレブンは決勝大会の為に懸命に練習を重ねていた。 私は今も練習に参加していない。行ったところで、のけ者にされて蔑まれるのがオチだろう。 というわけで、毎日のように痛い視線を背中に受けながら放課後はすぐに帰宅をしている。 一人でもなかなかいいものだ、と最近は少し哀愁漂うことも考えるようになった。 のんびりと読書をしたり、洋服を買ったりと今まで出来なかったようなことも出来てそれなりに楽しい。 「んー、帰りに本屋にでも寄ろうかな」 少し茜色がさした空の下、私は一人で帰路を辿っていた。 澄みきった空気が満ちてとても気持ちのいい午後だ。 こういう日が毎日続けばいいのに、なんて思ってしまうのも久しぶり。 私は大きく伸びをして体をほぐす。と、その時。 「羽…?」 私の目の前にふわふわと落ちてきたのは純白の羽だった。 そっと指の上に乗せると、羽毛が風にそよそよと揺れている。 辺りを見回しても真っ白な鳥などどこにもいない。でも、空から落ちてきたのは間違いなかった。 少し首をかしげながらも、私はその羽を指で弾く。羽はまたふわふわと落ちていく。 「嗚呼、やっと見つけたよ」 背後から柔らかく美しい声がした。 振り向いてみるとそこにいたのは少年…なのか? 中性的で端正な顔立ち、真っ白な肌に腰まである長いブロンドヘア。そして、琥珀色の大きな双眸。 少年というよりは少女、それも美少女にしか見えない。 「だ、誰…?」 きょとんとする私に彼女(彼?)は歩み寄ってきた。 近くで見るとさらにその美しさが分かる、何と言うか…神々しい。この言葉がぴったりと言うかこれしかぴったりな言葉が見つからない。 細くて綺麗な手で頬を軽く撫でられた。不思議と嫌な感じはしない。 むしろ、その優雅な動きに引き込まれてしまう。 「僕は亜風炉照美。会いたかったよ、名前」 「会いたかった……?」 僕、ということは男なのだろう。 見知らぬ少年の名前は照美と言うらしい。名前まで女っぽいような… そもそも、何故私の名前を知っているのだろうか。もしかして神様なんじゃないの、なんて子供らしい考えが頭をよぎる。 途端、私の唇に柔らかい何かが押し付けられた。 「んっ……!?」 それは照美のぷっくらとした唇で。 口付けられていると私の脳みそは処理できないようで。 驚いて呆然としている私をよそに、照美は唇を離すと自分のそれをぺろりと舐め上げた。 その仕草があまりにも耽美で私の顔に熱が集まった。 「な、な、なっ…!!」 「ふふっ、またね…名前」 何事も無かったかのように去っていく彼を見つめていると足の力が抜けてしまった。 私のファーストキスが初対面の少年に奪われた、なんて認めたくないけれど。 彼の唇の感触が残る唇をそっとなでると、火照った頬に純白の羽がふわりと落ちた。 美麗に笑う (この高鳴りは恋じゃない) ----------------------------------- お久しぶりです、12話です。 やっと期末テストという名の悪魔を打ち倒しました…! ここ数ヶ月は学校行事やらテストやらでなかなか更新が出来なくて。本当に申し訳ないです… さて、今回の話では照美さんがついに登場です! いきなり名前ちゃんにキスするとかどうなんだ、って感じなんですけども。 でも、名前ちゃんは照美さんに恋愛感情抱かないです、多分。 次は決勝大会書ければいいな…! 果実 |