戦慄と旋律


「さぁ!始まりました、FF地区予選決勝、帝国学園VS雷門中!進行はお馴染み、角馬圭太でお送りします!!」


いつものように角馬の声で始まる試合。相変わらず声の大きな後輩だ。
やっぱり、彼の進行が無ければ始まらない…というような気分になる。
フィールド上には帝国学園と雷門中の選手が立ち、私を含めたマネージャーや控え選手はベンチに座っていた。
この試合…どうしても気になるのが影山の動向だ。何をしでかすのかが分からない。卑怯な手を使ってくるような気がする。


「怖いの?名前」

「…別に。怖くなんか無い」


クス、と笑う真尋の笑みがを横目に私はフィールドを見回した。
見たところ異変は無い。けれど、とてつもなく胸騒ぎがする。背筋がゾクリとした。
そんな私を見てか、夏未が私の手をそっと握ってくれる。
こちらを見ようとはしないけれど、多分私を落ち着かせようとしているんだと思う。
夏未はこういうところで態度が素直にならないな、とつくづく思った。


「…ありがと、夏未」

「べ、別に…貴女のことを心配しているわけじゃないわ」


夏未はそっぽを向くけれど、その頬は明らかに赤かった。
これだけ私が嫌われていると言うのに、秋も夏未も春奈ちゃんも今までどおり優しく接してくれている。
私の味方…なのだと改めて感じる。私は一人じゃないんだ。
それだけでどんなに心強いことか…私はまだ戦える。いや、これから戦うんだ。

ん…あれは……?
有人が円堂に何か耳打ちをしている。何の心算だろうか?
そんなことを考えていると、試合開始のホイッスルが鳴った。
両チームいっせいに動き出す…と思ったその刹那。
頭上で何かが外れるような音がして、ガラガラと盛大な音を立てながら天井の鉄骨が雷門中サイドに落ちてきた。


「なっ…!」


誰もが息を呑み、言葉を失った。
まさか…影山がここまでやるとは思わなかった。こんなこと許される筈が無い。
きっと、雷門中のみんなは重傷を負ってしまっているのだろう。もしかしたら最悪の事態になっているかもしれない。
もうもうと立ち込める土煙が霧散するとフィールド上に見えたのは、地面に深々と突き刺さる鉄骨と無傷の雷門イレブンだった。


「嘘、どういうことなの…!?」

「これもシナリオどおりだよ、名前ちゃん」


混乱する私を見て、真尋はまた笑った。
でも今はそれどころじゃない。何故、誰も傷を負っていない…?
よく見ると雷門イレブンはその場から一歩も動いてはいなかった。
きっと有人がさっき耳打ちしていたのはこのことだったのだろう。「その場から動くな」と伝え、それが功を奏したのだ。
安堵感と恐怖心とが入り混じり、胸がバクバクと跳ねた。


私はベンチから影山の姿を探した。
しかし、彼の姿は何処にも無い。大方、別の部屋で試合を観戦しているのだろう。
このことは帝国イレブンにも伝えられていなかった筈だ。
帝国のメンバーですら唖然とした顔で雷門サイドを見つめている。


「ゆる、せない……」


見えない影山を憎悪の念で睨みつける。
ここにいないことは分かっていた、けれど、この怒りの矛先は影山でしかないのだ。
そして同時にあることを考えてしまう。
…あの時、私が影山の誘いを断っていなかったら、状況は変わっていたのだろうか?
もしも、そうだとしたら…私は何てことをしてしまったのだろう。彼らを守ると影山の前で言ったのに。傷つけようとしまったではないか。

後ろめたい気持ちを抱えながらピッチを見ると、鉄骨をどかす作業が始まっていた。
あんなに大きな鉄骨が当たれば、中学生などひとたまりも無いだろう。
気がつくと、真尋以外のマネージャー三人が、私に抱きつくような形で身を寄せ合っている。
何と言うか…不謹慎だけど少し幸せだった。

すると、帝国サイドで有人が動きを見せた。
ベンチから立ち上がると、奥へと姿を消したのだ。
もしかしたら、影山の元へ向かうのかもしれない。そうだとしたら、私も奴に言いたい事がたくさんあるのだ、付いて行っても構わないだろう。


「ごめん、ちょっと席外す」

「え…!?名前さん!?何処行くんですか!!」


春奈ちゃんの声を無視するように、私は有人の後を追った。
何故か、また胸騒ぎがしてしょうがなかった。



戦慄と旋律

(奔る戦慄、鈍い旋律)


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…ということで10話です。

遅くなって本当に申し訳ないです…夏がここまで忙しくなるとは予想外でした;;
3話一気更新は無理そうですが、近いうちにあげられたらいいなぁ、とは思っていますので…!
今しばらくお待ちくださいませ!!

今回はFF地区予選決勝です、私の予想通りサッカーはしませんでした(笑)
そして、文章大目ですみません…会話がほとんどないということになってしまいました…orz
でも、次は鬼道と影山を同時に出すと言う書きたかったシーンが書けます、やったー!
そして、VS帝国戦が終わればいよいよあの人の登場でございます…!

あと、アクセス数が伸びまくってもう少しで5000を達成しそうです!
本当にありがとうございます…!こんなサイトにこれだけの方に来てもらえてとても嬉しいです!
フリリク企画とかできればやりたいなぁ、と思っているのでこちらも乞うご期待ということで。


果実



P.S
何故か今回テンションが高かったのは、夏コミとイナゴのトークショーのせいです。
いつもとテンション格差酷すぎてごめんなさい(笑)



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